家具レンタルから職人マッチングまで、シェアエコサービスの今 - (page 2)

シェアに向くのは「でかくて、重くて、高いもの」

 ここで重松氏は「不動産領域がシェアリングエコノミーでどう変わると思うか」と問いかける。久保氏は「『でかくて、重くて、高いもの』はシェアリングにはまる。今は若い世代を中心に、ライフスタイルやステージの変化が早い。住むのに便利な場所もどんどん変わっていく。そうなってくるとでかくて、重くて、高いものを持つことが、自分の選択肢を妨げてしまう可能性がある。チャンスを逃すことにもつながるかなと」と持論を展開する。

 さらに「シェアリングサービスは、住宅にまさにはまってくるはず。住宅や家具はシェアを前提にしたものが求められるようになり、規格がガラッと変わるだろう」(久保氏)と予想した。

YKK AP 経営企画室 事業開発部 部長の東克紀氏
YKK AP 経営企画室 事業開発部 部長の東克紀氏

 それを受け東氏は「コンテナハウスがまさにそれ。規格化した家を作ることと、シェアがセットになっている」と現在手がけるコンテナハウスが、シェアリングサービスを意識したものだとした。

 こうした“変化の加速”は、オフィス環境にも影響を及ぼす。韓氏は「オフィスの内装はかなりの費用が必要になるが、社員数の増減などにより数年で転出するケースも出てくる」と指摘。重松氏は「スタートアップ企業の移転に伴う原状回復費用は本当にもったいない」と受けた。

 久保氏も「(CLASでも)オフィスを借りたばかりだが、もう数カ月で引っ越ししかねない。その時に家具は持っていけないことが多く、処分するにもコストがかかる。これはもったいない。そのためCLASでは引き取りも実施している。今は個人も法人も変化のスピードが早い。サービス提供者側の時間軸がユーザーに追いついていないと感じる」と指摘した。

スペースマーケット 代表取締役の重松大輔氏
スペースマーケット 代表取締役の重松大輔氏

 重松氏は「あらゆるものがフリクションレスになって、簡単に流動できるようになる。レンタルスペースも伸びているのは即借りられる所。そういう世界が5年後くらいには当たり前になるのでは」と予測する。

 さらに「確かに久保さんが先程話した『でかくて、重くて、高いもの』はシェアされやすい。オランダには近所の人とモノの貸し借りができるプラットフォームサービスがあって伸びていると聞く。たとえば高圧洗浄機や芝刈り機は持っているけれど使う頻度が低い。そういうものをコミュニティで可視化して、シェアするのは可能性がある」(重松氏)と続け、小さなコミュニティにおける、シェアサービスの可能性を示唆した。

 それに対し韓氏は「そういう動きを見ると原点回帰している気がする。子どもの頃は近所にある電気屋さんがちょっとした電球交換などを手伝ってくれるような、そんな付き合いがあった。それが希薄化してはいるが、まだ残っている。そういう世界観をローカライズしていくイメージ」と受けた。

 近所、ローカライズ、原点回帰といったキーワードが出てくる中、久保氏は「あとは即時性。近所の電気屋さんはすぐ来てくれるというイメージが強い。引っ越しなどもすぐに見積もりがほしいのに、そこにたどり着くためのステップが多い。シェアリングエコノミーでは、サービス提供者を個別レーティングすることで、一対一での関係が可能になり、より即時性のあるサービスを提供できる」とキーワードを追加した。

 会場では、来場者からの質問タイムも設けられた。シェアリングエコノミーでは、クライアントとユーザーの両方を獲得しながら提供するサービスが多い。同時に2つの営業をしなければいけない点について問われると、重松氏は「とにかく最初は貸し出してくれるスペースを集めた。あとは『すごい(サービス)』と言い続けることが大事。常に言い続けることで後から世の中が着いてきた。時間との勝負になるが、1~2年は我慢して、やり続けた」とスペースマーケット立ち上げ時を振り返った。

 CLASを手がける前にアパレル通販会社を起業した経験を持つ久保氏は「心がけているのは、クライアントとユーザーの両方を獲得するのがものすごく大変であれば、事業をピポットすること。説明コストがかかるなどのデメリットが多い時は、多分サービス上の利点が弱いとか、区別ができていないとかの弱点がある。ひたすらピポットを繰り返すことでを試している」と自らの経験を話した。

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