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美少女ゲーム業界の敏腕キュレーターが語る--クラウドファンディング国内最高1.3億円超えの舞台裏 - (page 2)

佐藤和也 (編集部)2018年12月05日 16時00分
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クラウドファンディングで必要な6つの要素

ーークラウドファンディングについて、5年前にお話を伺った時点では、2案件で試しているというような状態だったかと思います。それ以降は、どのようなスタンスで取り組んでいたのでしょうか。

 あれからは、自分がクラウドファンディングそのものに興味があって続けたのが7割、結果的にそれが商売になったというのが3割ぐらいかな。取り組み始めたときに「このやり方は、bambooのような特殊な環境に置かれた人間じゃないと使えない」を言われたことがあったんですが、僕はそうじゃないと思っていたんですよ。きちんとメソッド化して、ほかの人でもできる取り組み方があると考えていたので、さらに研究を深めていったんです。

 僕は、クラウドファンディングはミュージシャンやゲームメーカーのような、一定のファン層を持っている方が商売をしたり、やりたいことを続けたりしていくための武器になるという考えを持っていました。だから幅広くデータが欲しかったので、売れている人から売れていない人まで全部やるぐらいの気持ちでいましたね。

ーー以前のインタビューでは「クラウドファンディングは熱量がないと」ということを話していました。あれから研究と経験を重ねたなかで、改めて起案者として臨むにあたって必要なものはなんでしょうか。

 今ではよくお話することですが、「メリット」「ロマン」「ムード」「ドラマ」「予算」「客観視」の6つの要素が必要です。メリットは文字通り、支援者へのメリットでわかりやすいと思いますが、プロジェクト自体にロマンを感じさせること、また支援したくなる雰囲気(ムード)作りや、魅力的に演出するドラマ的な要素も必要かと。一方で、どれだけのコストがかかるかを把握する計画的な予算管理や、第三者的な視点でプロジェクトを見る客観的な視点も必要。これが揃わないとうまくいかないと考えています。

ーー今、bambooさんが感じている、クラウドファンディングを活用するメリットはなんでしょうか。

 自分自身の知名度や価値、信用を金銭に変えるという場面は絶対あると思います。それをわかりやすく提示することと、イベント化できるのもメリットだと思ってます。例えば、プロジェクトが100%に到達したら、起案者も支援者もお互いに嬉しいはずなんです。それが200%、300%まで達成したら、ストレッチゴールによってリターンがグレードアップして、さらに嬉しいという体験が味わえる。これってイベントですよね。

 ただ、残念ながら日本のほとんどのプロジェクトは、そこまで考えていない。起案してお金を集めて終わると。もったいないと思います。

 クラウドファンディングは、信用と熱量を肥料にした畑を作るという考え方もできると思います。サクセスするとお米が収穫できるという感覚で、次はもうちょっと規模を拡大していいお米がとれるようにする土壌が、ファンと起案者で作り続けられると思うのです。

 ことゲーム制作に関して言うのであれば、モチベーションを高く保てるという側面もあるかと。日本のゲームは減点方式で評価されると感じていて、少しでも気に入らないところがあると、ゲーム全体の評価として叩かれる傾向があるととらえています。それだとクリエーターのモチベーションが保ちにくい。もちろんユーザーのニーズに沿わなかったメーカー側も悪いところはありますが、やはり人間ですから。頑張って作っても気に入らないという理由でダメだと言われるような環境で、モノづくりを続けるのは厳しいのも本音です。

 その観点から見るとクラウドファンディングは、信じて支援してくれているわけなので、応援されていることが可視化されて、金額にも表れるわけですから環境的にはいいです。こっちもその期待に応えるべく、強い気持ちを持って臨めますので。

ーーbambooさんは自社と他社のキュレーションも含めて多数のプロジェクトを起案していますけれども、多くの起案者は単発で終わっているような気がします。

 疲れるんです。今でもプロジェクトを掲載すればお金が簡単に集まると思っている方が多いのですが、考えなければいけないことが多いんです。事前予約販売の側面とともに、信用と約束を賭けての企画でもあるので、やっていいことといけないことがたくさんあります。それを踏まえて、事前にきちんと段取りを考えて仕込んでおかないと、後で対応に苦慮することになって疲弊してしまいます。

 そもそも研究しない人も相当多いです。クラウドファンディングの特性も理解せず、研究もしないまま勢いでプロジェクトを出して、対応に苦慮して疲弊してしまい、さらに手数料もかかるから使う意味がないと結論付けてしまう。クラウドファンディングのメリットとデメリットを起案者が把握したうえで、支援者になるファンに対しても説明しなきゃいけないのに、できていない。クラウドファンディングの使い方としてもったいないし、残念だなと思いますね。

 連続でプロジェクトを出している方は、たぶん全体の1割もないんじゃないかな。最近はツインスティックのプロジェクト(※タニタの「PlayStation 4『とある魔術の電脳戦機』に対応するツインスティック!」。1回目はサクセスしなかったが、見直しを図り再挑戦。2回目はサクセスした)がうまかったと思いますね。一種のマーケティングといいますか、1台があの金額(※約5万円。2回目ではコストダウンを図り約4万円に)でも8000万円分の支援者がいるということがわかったわけですから、見直しをしたらサクセスできると。

 もちろん2度目のときは、バーチャロンシリーズ3作のPS4移植が加わっての強い追い風もありましたが、こういう再チャレンジは欧米的によくあることですから。起案して失敗しても的確なプロジェクトに仕上げたわけですし、評価されていいことかと。あきらめなかったというのもドラマじゃないですか。何が何でも成功させるというのを、日本企業は見習わないといけないですよ。一度失敗したら終わりではなく、何で失敗したのかを考えるべきです。本来やるべきことができていなかった部分があったからなので。

ーー研究しない方が多いというお話ですが、相談やアドバイスをしていくなかで感じることはありますか。

 何をしたらいいかわからないと言われる方も少なくないですが、大前提として「自分がやりたいことがあって、クラウドファンディングを使うんでしょ」なんです。勘違いされる方も多いのですけれど、声を挙げるのは自由ですが、お金が集まるかどうか、それが叶うかどうかは本人の頑張り次第です。

 でも「わからないままですけど、教えてくれるんでしょ?」と言うような、他力本願の方もいます。こちらからはアドバイスとして基本的なことは教えられますが、自分で頑張らないと支援者へ伝わるものも伝わらない。その頑張りは無駄にはならないですよ。セルフプロデュースを高める行為にはなるはずですから。

 ある若手女性ミュージシャンのプロジェクトを手掛けるときに、まずネットの生配信で同時接続数100人を目指すことと、女を売りにせずきちんと歌とトークを売りにして、ファンを作ってから始めましょうという条件を出したんです。それを半年ぐらいかかって達成して、いざクラウドファンディングを実施したら200万円ぐらい集まったんです。そういう土壌を作らないといけないものなのです。

 ほかにも、集まった金額がそのまま使えるというイメージも未だにあります。プラットフォーム手数料や決済手数料もそうですし、意外と見落とされがちなのが、リターンの製造コストは想定していても、それを支援者に発送するコストまで想定していない人も多いです。今回のMUSICA!プロジェクトで言えば、企業で行っているということもあるので、消費税も必要です。おおむね調達した金額の3割、場合によっては4割近くかかる場合もあります。だからプロジェクトの盛り上げだけではなく、一歩引いた視点と予算管理も大事なのです。

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