1987年に連載を開始し、2017年に30周年を迎えた漫画家・荒木飛呂彦氏の代表作「ジョジョの奇妙な冒険」。ジョースター家の血縁と因縁を描いた同作は、第1部から現在連載中の第8部まで“大河ドラマ”のように主人公が代替わりしていく設定や、読者を物語に引き込むユニークな擬音やポージング、緊張感と迫力のあるスタンド同士のバトルなど、その唯一無二の作風が、いまなお熱狂的なファンを生み続けており、単行本の累計発行部数は1億冊を超える。
そんな同作の集大成ともいえる展示会「荒木飛呂彦原画展 JOJO 冒険の波紋」が、8月24日から10月1日まで、東京・六本木の国立新美術館で開催された。国立美術館における漫画家の個展としては、手塚治虫氏以来28年ぶり2人目の快挙であることも話題となり、会期中には14万人ものファンが来場。約2メートルの大型描き下ろし原画を12枚も並べた新作「裏切り者は常にいる」を始め、同作の世界観をこれまでにないスケールで体感できる“ジョジョの祭典”は、多くの来場者を魅了した。
そして、いよいよ11月25日から同展が大阪へと巡回する。実はジョジョの展示会が大阪で開催されるのはこれが初めてで、同会場でしか見ることのできないカラー原画や、大阪限定のグッズなども多数用意されている。また、東京と同じく、ジョジョ仕様になったローソンの店舗「OWSON」や、メルセデスミーとコラボした店舗なども特設されており、大阪の街全体でジョジョを満喫することが可能だ。
大阪展の開催を目前に控えた11月22日、作者の荒木氏が会場である大阪文化館・天保山を訪れ、ジョジョの魅力や作品への想いを語った。意外にも荒木氏自身、これまで「和歌山に行くときに乗り継ぐくらい」(同氏)しか大阪に来たことがなく、実際に大阪の街に降り立ったのは今回が初めてだと明かす。
一方で、大阪は荒木氏が漫画家を本気で目指すきっかけを与えてくれた地でもあったという。「高校生だった時に、大阪出身の漫画家さんがデビューしたと思ったら、あっという間に少年ジャンプで連載を始めて、傑作を描いていた。それも同い年の高校生だった」(荒木氏)。その漫画家とは「キン肉マン」の作者である、ゆでたまご氏。当時は「呑気な漫画好きな高校生」だった荒木氏はこれに衝撃を受け、自身も集英社へと原稿を持ち込むようになったという。そして、20歳の時にデビューした。
荒木氏は「大阪で描かれている漫画の先生という、憧れや目標みたいなものがあった。(ゆでたまご氏は)30代になっても、40代になっても素晴らしい先生で、いつも目の前にいるというか、目の上にいるというか……。そういう目標を示されたことは本当に幸せで、ジョジョ展をこの大阪の土地で開催させていただけることは、感慨深い」と大阪展への思いを語った。
同日には、少人数のグループインタビューという形で、荒木氏に話を聞く機会を得た。ここからは、同氏への一問一答の内容を“たっぷり!”お届けする。
——漫画家を本気で目指すきっかけを与えてくれた、ゆでたまご先生の「キン肉マン」に登場するさまざまな超人は、ジョジョのキャラにも影響を与えていますか。また、同い年ということで、ライバルとして意識されていますか。
そうですね。バトルの作り方とか……そういう世界観ですよね。キャラクターがたくさん出てきて、読者にそれぞれのファンが付いて。(キン肉マンは)リングの上ではありますけど、戦っていく構図とか。あと、(ゆでたまご氏は)同世代ということで、すごく目標というか励みになっている。それって漫画家として幸運だなって。目標がないまま漫画を描いていないという意味で、幸せなことだと思います。
——「ジョジョの奇妙な冒険」が世の中に浸透したなと感じることはありますか。
少年ジャンプで描いていた頃は理解されていないかなっていう、ちょっと孤独感みたいなものがあって、それでも頑張って描こうと思ってましたけど。それから時間が経って、例えばお医者さんで胃カメラとかやられながら、「先生のファンです」とか言われると、「ああ、胃を見られながらファンなんだぁ」って思ったりするのが嬉しいですね(笑)。そういう時は、浸透してるのかなって思いますね。
——ジョジョのキャラクターはそのファッションも魅力の1つですが、衣装を描く上で参考にしているものはありますか。
いろんなところにデザインがあるので、それを持ってきたいなって思います。特定のアーティストというのはないですけど、男性女性区別なくとり入れているというか、男だけど花柄にしたりとか、そういうのが楽しいので。あと、機械の一部分だけデザインがいいなって思ったりすると、(キャラクターの衣装などに)描いてみたりしますね。
——「美意識」について、荒木先生が刺激を受けるものは何でしょうか。
音楽ですね。音楽って時代があるじゃないですか。70年代だなとか、今だなとか、病んでるなとか、森の中で聴いたら良いなとか。あとダンスの新しいビートの形とか。そういうものは刺激になりますよね。
——スタンド名にも数多くのバンド名や曲名が登場しますが、荒木先生が特に好きなアーティストをあえて挙げるとするなら……?
そこいきますか(笑)。ほとんど好きだから描いているんですけど……例えばキング・クリムゾンとか好きですし、ピストルズもいいですよね。
——ジョジョに登場する数多くのスタンドのヴィジュアルやネーミング、能力はどのような順番で決めているのでしょう。
スタンドによって、その時々なんですよ。前回はバトルシーンが多かったから、今回の動きはちょっと遅めでジワジワくるやつ。感覚的にいうと“鉛が溶ける”ようなイメージとか。そういうふうに決めていくので、順番はいろいろです。あと、それにあわせたネーミングを引っ張ってきたりとか。
——スタンドによって、当初イメージされた展開から後々変化することもありますか。
それはしょっちゅうというか、それが全てかもしれないですね。(物語の展開は)実は計画していなくて、こうなるだろうなっていう最後だけ決めておいて、あとは流れですね。だから、4部の吉良吉影のキラークイーンのときは、強すぎて……ちょっと主人公が勝てるのかなって思いましたね(笑)。本当にこのままだと連載自体が非常にマズいっていうか、将棋をしていて詰まれている感じがすごくあって、自分で追い込んでしまったところがありました。
——荒木先生は、紙や手描きにこだわりを持たれていると思いますが、改めてその想いを聞かせてください。また、近年はデジタルツールを使った漫画も増えていますが、こちらについてはどう思いますか。
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