英what3wordsは11月21日、都内で記者説明会を開催した。同社のChief Marketing Officer(CMO)を務めるGiles Rhys Jones氏が来日し、what3wordsが提供している独自の位置情報システムの概要と、今後の展望について説明した。
what3wordsは、地球の表面を3メートル四方、合計57兆個の矩形で区切り、それぞれの区画に3つの単語で構成する固有のアドレス(3ワードアドレス)を割り当てる位置情報システムを開発・提供しているベンチャーだ。現在は英語、日本語など世界26の言語に対応し、11月22日には中国語に対応する。3ワードアドレスは、同社のウェブページや、iOS/Android対応のスマホアプリで確認できる。
what3wordsには独Daimlerや、米Intel Capital、アルパインなどが出資している。さらに、11月6日にはソニーのコーポレートベンチャーキャピタルであるSony Innovation Fundが出資した。2013年の創業以来、累計で4350万英ポンド(62億6400万円:1ポンド=144円で換算)を調達している。
Jones氏は、既存の住所の仕組みには不完全な部分があり、多くの人が不便を強いられていると指摘。そしてwhat3wordsが開発した「3ワードアドレス」は、住所の仕組みを補完し、不便を解消するものだと語った。
what3wordsは、共同創業者でCEOを務めるChris Sheldrick氏の経験がヒントとなって開発が始まったという。Sheldrick氏はかつて音楽イベントを企画開催していたが、楽器や各種機材をイベント会場に運び込んでもらう時にしばしばトラブルに遭遇していた。会場の住所を知らせて、機材を運んでもらおうとするが、住所だけでは会場の位置までは分かるが、機材搬入口までは分からない。その結果、定刻になっても機材が届かず、長時間待たされたこともあるそうだ。
Sheldrick氏は、機材搬入口の場所をピンポイントで搬入担当者に伝えようと考えた。GPS(Global Positioning System)から取得できる緯度経度を使えば、位置を正確に伝えられる。しかし、10桁を超える数字の羅列など普通の人間が覚えられるものではない。代わりに、人間が簡単に覚えられるアドレスを使う仕組みを開発しようと考えたことがwhat3wordsの設立と、3ワードアドレスで地球上のあらゆる位置を示す位置情報システムの開発につながったという。
例えば、東京ドームで待ち合わせようと事前に話し合ったが場所を細かく指定できず、待ち合わせに失敗し、お互い探し回ったといったことを経験した人も少なくないと思う。友達や会社の同僚と桜の花見をしようという話になっても、どの桜の木の下で花見をしているのかを後から来る仲間に伝えることはかなり難しいということも想像できるだろう。
そしてJones氏は、ロンドンやニューヨークなど比較的整然と住所を割り当てている都市でも問題が発生すると話す。似たような表記の住所がいくつも存在するというのだ。これでは地図サイトでキーワード検索をしても、いくつもの候補が現れて自分が探している場所がどれなのかが分からなくなってしまうだろう。
また、地震や津波などの大災害が発生し、道路も建物も崩れてしまうと、もはや住所で特定の位置を示すことは不可能だ。位置を指定できないと、救助活動がより困難なものになる。そもそも、世界中には住所がない場所が数え切れないほどある。Universal Postal Union(万国郵便連合)の調べによると、世界のおよそ75%の国は住所のシステムが未発達、あるいは存在しないという。自宅に住所がないと投票や銀行口座の開設など、当たり前に思えるようなことも不可能になり、途上国の成長を阻害してしまう。
Jones氏は3ワードアドレスを使った位置情報システムを利用することで、以上のような既存の住所システムの欠点を補えるという。例えば、巨大なスタジアムにある複数の入り口をそれぞれ異なるアドレスで正確に示すことが可能だ。
また、3ワードアドレスを使えば、駐車場の所在地だけでなく、1台1台の駐車スペースをそれぞれ指定することも可能だ。what3wordsに出資しているDaimlerは、3ワードアドレスで位置を指定できるカーナビゲーションシステムを搭載した車両を発売している。音声による入力に対応しており、3ワードアドレスを話しかけるだけで、目的地を指定できるという。
そして、what3wordsがオフィスを置いている南アフリカでは、住所の割り当てを受けていない場所で、3ワードアドレスを利用する動きが広がりつつあるという。また、モンゴルには、3ワードアドレスで自宅の位置を指定できる銀行も登場している。
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