筆者は生まれて初めて読んだ文章を今でも覚えている。幼稚園の教室で、水をはじくカーペットに座っていた。窓越しに見える太陽は明るく、小さなペーパーバック本は自分の手には大きく感じた。クラスメートたちが室内の別の場所でふざけている横で、「ハチが飛ぶ」という文章を読んだ。本に書かれた言葉以上に、自分が探検できる新しい秘密の世界への扉を開いたような感覚をよく覚えている。
Apple製デバイス向けの新しい拡張現実(AR)アプリ「Wonderscope」は、あの子供時代の感覚、物語によってかき立てられる子供の想像力を筆者に思い出させた。Wonderscopeでは、アニメーション化された物語が、没入的なミニチュア劇のように目の前の床やテーブルの上で展開される。ユーザーがその物語に書かれた台詞を言うと、キャラクターがユーザーの目を見て、反応してくれる。背景の小さな木をタップすると、漫画のように大喜びして飛び跳ねる。
このアプリを開発したWithinの最高経営責任者(CEO)のChris Milk氏は、次のように述べている。「このアプリは大人の自分のためというよりも、自分の中に宿る7歳児のためのものだ」
WonderscopeはARでのストーリーテリングにいち早く挑戦したアプリの1つだ。ARは画面上でユーザーの周りの現実世界にデジタル画像を重ねる技術で、今大きな話題になっている(例えば、Snapchatのフィルタや「Pokemon GO」はAR技術を使用している)。だが、このARの形式でできることは、奇抜な顔のフィルタやトイレの上に立つゼニガメだけに留まらない。AppleのCEOのTim Cook氏はARについて、「iPhone」と同じくらい重要なものになる可能性を秘めている、と語った。「iOS 12」のアップデートは、私たちがやがてARヘッドセットに求めるようになるかもしれない機能へと向かっている。
Wonderscopeは、ARを用いたエンターテインメントの未来の姿を示唆している。このアプリは、話題性のある仮想現実(VR)体験の開発元としてよく知られるWithinにとって、初のARプロジェクトでもある。
Wonderscopeは、飛行機の翼の上に立ってスタントをするおばあちゃんなど、スリルを求める意外なキャラクターが登場する「A Brief History of Stunts by Astounding People」と、古典的なおとぎ話にひねりを加えた「Little Red the Inventor」の2つの物語と共に、米国時間11月14日にリリースされた。いずれの物語も、ユーザーの部屋の中にミニチュアのセットのようなものを作り出す。Wonderscopeは物語の脚本に書かれた短い台詞を言うようユーザーに促し、ユーザーがその台詞を言うと、キャラクターはまるでユーザーに直接話しかけているかのように、目を見て答えてくれる。
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