保育園の課題といえば、「待機児童の解消」「保育士不足」といった“量”的な問題が議論の対象となりがちだが、実際に園に通う子どもたちや保護者にとって重要なのは保育の“質”だ。この質を担保するために、保育士が大きな負担を抱えて乗り切っている現状がある。そんな保育士たちをサポートするために開発されたのが、保育園・幼稚園専用の業務支援システム「CoDMON(コドモン)」だ。
CoDMONの開発経緯や今後の展望について、運営会社であるスパインラボ代表取締役の小池義則氏に話を聞いた。また、保育園事業を展開するHITOWAキッズライフ運営推進部の池野奈美子氏、太陽の子要町保育園の園長である池田尚也氏に、CoDMONを実際に運用する上での使用感やメリットなどを聞いた。
CoDMONは、必要なサービスを必要な分だけ利用できる、SaaS型の保育園・幼稚園向けクラウドITシステムだ。2015年にサービスを開始し、導入園数は2000施設を超える。
料金は、連絡帳、欠席・遅刻受付、保護者専用アプリなどが入った基本機能が月額5000円。また、基本料金にオプションを追加する形で、登降園/勤怠管理機能を月額3000円、報告書/指導案作成機能を月額5000円、シフト作成機能を月額3000円で提供している。90%以上の施設が登降園/勤怠管理機能を利用しているという。
スパインラボの小池氏が初めに保育園事業のシステム開発を手がけたのは、とある保育園運営事業者からの受託がきっかけだった。対象の保育園は登降園の管理、帳票などをすべて手書きでしていたため、保育園を運営する本部は現場の状況を把握できず、サポートしようにもできないことが悩みだったという。小池氏はシステムを担当しているうちに、他の保育園にも同様のニーズがあるのではないかと感じ、自社プロダクトとしてCoDMONを2年をかけて開発し、2015年にリリースした。
「保育の質に関する議論があまりなされていない」と、小池氏は保育園事業が関わる課題について述べる。「保育士は提出する書類が多く、園によっては持ち帰り残業も多いため、離職率が高い。現状では保育園が増えたところで、志のある保育士を採用し続けられるのか疑問だ。質の高い保育を目指すには、保育士のサポートを誰かがやらねばならない。それは自分たちのような民間事業者だと考えている」(小池氏)。
非効率な業務を効率化することによって、保育士が子どもとふれあう時間を増やし、心のゆとりを持てるようになることがCoDMONの立ち位置だと小池氏は語る。
「園児はさまざまな個性や特性を持っていて発達状況も異なるため、画一的な保育をするべきではない。発育環境や家庭環境もそれぞれ異なる。そのため、保育士は園児と触れあい、子どもそれぞれに合った対応をチームで議論しながら進めていく必要がある。ところが実際は、子どもが帰ると書類業務に追われてしまう。書類業務は本来保育を振り返ったり品質の高い保育計画を立てる目的で行っているはずなのに、作ることが目的になり、ただ仕上げて出す状態になっているような園も実態としては多い。それは大きな課題だと考えた」(小池氏)。
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