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判断基準は「将来図からの逆算」--C Channel森川氏に聞く新規事業のコツ - (page 2)

藤井涼 (編集部) 阿久津良和2018年11月30日 08時00分
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 そうですね、残念ながら(笑)。社内には新規事業の立ち上げ経験を持つ人材がまだ少なく、大成功の経験を持つとなるとなおさらです。ベンチャーにおける新規事業失敗はリスクになりますので、ある程度までは僕が参加することが多いですね。事業化の判断基準は「未来はきっとこうなるだろう」という将来図から逆算します。もちろん利益化は大事ですが、将来成長する領域に注目します。

 このように考えるのは過去の経験も少なくありません。世界中に知り合いがいて、各国市場に対する知見を持っているのは大きいと思います。いまの日本は、グローバルと比べると新しい情報を得ることが難しく、(世界から)後れていると言わざるを得ません。例えば「シリコンバレーは、最近の中国・イスラエルは」と新しい情報を得て、日本でブレイクするタイミングに注目しています。

 他方でデータ以外の感覚的な部分も重要ですね。前職の時もそうでしたが、日本と韓国で流行ったモノがあっても、そのまま一方に持ち込んでもうまくいきません。そのため、何がヒット要因となるかを考え尽くします。このような経験を持たれている方は少ないため、既存のロジックに陥りがちです。ですが、既存ロジックを使ってもベンチャーは興せません。

C Channel 代表取締役社長 森川亮氏

「トライ&エラー」では成功しない

——mystaには多くのパートナー企業が参画しています。どのタイミングから連携を始めたのでしょうか。また、複数社と自社単独、それぞれで新規事業を立ち上げる際に、気をつけるべきポイントはありますか。

 テストサービスを2018年1月に開始し、早期から手応えを感じました。ただ、出口がないと事業はうまくいきません。その出口を明確にするためにパートナーの皆さんと話し合い、協業に至りました。パートナーシップを組んで新たなビジネスを始める時は、いろいろな協力が必要となります。特に見えていなかったモノを具現化するには大切です。

 とはいえ、単純に出資を受けるのは事業の“邪魔”になる可能性もあり、ビジネスチャンスを逃しかねません。例えば、とある企業と組んだ場合、「その業界は1社」と限定されるケースや、「資金は出すけど協力はしない」ということもあります。最初に事業提携まで落とし込んでから資本提携をする方がよいと思います。

 自社単独で新規事業に取り組む場合は、「ビジネスを辞めるタイミング」が大事ですね。経営者が着手した場合、引っ込みがつかなくなり、辞める判断が難しくなります。(開始前から)一定の基準を設けることが重要です。

——実際にサービスを開発する際には、エンジニアのリソースが必要になります。C CHANNELで多忙なエンジニアをどうやって巻き込んだのでしょうか。

 やはり夢を語るしかないですね(笑)。(エンジニアとしても)これまで取り組んでいた事業から別事業に異動するわけですから、それなりの覚悟が必要です。仮にサービスを撤退した場合、「僕の仕事はどうなる」となりますから。唯一、良かった面は男性エンジニアが限界を感じていた部分でしょうか。C CHANNELは女性向けメディアであり、男性に女性の気持ちを100%理解することは難しいため、幅広いサービスに挑戦したいというエンジニアを集めました。

——サービスが完成した後に求められるのがマーケティングです。どのようなアプローチをとっていますか。

 2つあります。1つは「ステルスでやり続ける」ということ。もう1つは今回のように発表会を開催する方法です。資本を集めた関係からステルスでいることは難しく、開催に至りましたが、ベンチャーの場合は注目を集めてマネされるリスクを抱えるため、実際はステルス手法を取ることが少なくありません。

4月に開かれた「mysta」の記者発表会の様子。エフエム東京、産経デジタル、集英社、松竹、ソフトバンク、TBS、ポニーキャニオンなどが参画を表明した
4月に開かれた「mysta」の記者発表会の様子。エフエム東京、産経デジタル、集英社、松竹、ソフトバンク、TBS、ポニーキャニオンなどが参画を表明した

 今回の会見でさまざまな業界から注目をいただきましたが、われわれがチャレンジするのは旧態依然とした業界です。タレント事務所や大手メディアはデジタルに抵抗感を持ち、分かっていても対応を後回しにしている企業が少なくありません。だからこそチャンスだと考えています。

 変わらない業界には参入障壁があり、そこを地道にやり続けることで突破できるのではと考えています。C Channel開始当初も「動画は早い」「動画元年はいつ?」と周りから嫌味を言われましたが、結果はご覧のとおりです。もちろん発表から半年が過ぎた程度なのでまだ赤字ですが、収益化も規模拡大は順調に進み、オーディション系企業やタレント事務所、大手メディアからもお声がけいただきました。

 現在はアイドル系イベントと提携し、mystaを通じて出場権を提供しています。歌ではポニーキャニオンやCJと提携し、K-Popアーティストオーディションを開催してきました。女性系ではオスカーや大学のミスコンテスト、雑誌連携もしています。男性系はメンズノンノやジュノンボーイ。お笑い系は太田プロや松竹など、すでにドラマの主演が決定するといった動きがあります。

——最後に、新規事業に最も大切なことは何だと考えますか。

 「必ず成功する気持ちでいること」ですかね。スタートアップのピッチイベントの審査員などもする機会が多いですが、「トライ&エラーだからいつか成功する」と言われる方も少なくありません。ですが、その表現を用いる方がうまくいった試しはありません。最後に成功する人は「絶対うまくいく」と信じている方が多いですね。そうでないとお金も人もついてきません。仮に腹の底で(トライ&エラーでもよいと)思っていても、決して口に出してよい言葉ではなく、前向きな気持ちを持たないと成功できません。

 あとは未来を見据えることでしょうか。バイアウト目的で取り組まれる方が少なくありませんが、そうなると目先のプランに陥りがちです。ゴールと決めた市場に対するアプローチや考え方、信念を持った方がいいですね。

森川氏

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