ドコモの料金値下げ発表は、他の2社にも大きな影響を与えた。実際、ドコモの決算発表翌日となる11月1日には、携帯電話各社の株価が大幅に下落。中でも最も株価を下げたのがKDDIだ。
そのKDDIは、同日に決算説明会を実施。今四半期も売上高が前年同期比で1.9%増の2兆4623億円、営業利益も3.4%増の5612億円と、増収増益を記録している。しかし、国内通信事業への依存度が高いKDDIは、今後料金競争が加速する影響を最も大きく受けると見られ、株価を大きく下げたのだ。
同社代表取締役社長の高橋誠氏は、ドコモの新料金プランが分離プランを軸にするとしたことを受ける形で、同社が2017年に導入した「auピタットプラン」「auフラットプラン」で分離プランを導入済みであること、その影響によって年間約3000億円の通信料が減収となっていることを強調。その上で他の事業がけん引する形で増益を達成していることから、行政からの要求に対して「ドコモより一歩先に宿題を済ませている」(高橋氏)とし、今後の大幅な減収はないと説明した。
ただし、当然のことながら、ドコモが分離プランにとどまらない値下げを実施すれば、競争力維持のためさらなる値下げが求められ、一層の減収となる可能性がある。そうした今後の競争に備えるという意味でも注目されるのが、KDDIが新たに打ち出した楽天との提携である。
KDDIは携帯電話事業に新規参入する楽天と提携し、楽天が全国にネットワークを整備する2026年3月まで、東京23区と名古屋市、大阪市、それ以外の混雑地域を除くKDDIのネットワークをローミング提供する。一方でKDDIは楽天からQRコード決済「楽天ペイ」の店舗網や、「楽天スーパーロジスティクス」などの物流システムなどの提供を受け、決済やEコマース事業を強化するという。
楽天は2019年10月の携帯電話サービス開始に向け、全国でサービスを提供するには他社とのローミングが必須だった。その相手が、MVNOで関係を持つドコモではなくKDDIとなったのは、1つにKDDIが楽天と事業の重複が少なく、相互補完関係を築きやすかったこと。そしてもう1つは、MVNOとしてネットワークを貸し出す良好な関係から一転して、ライバルとなった楽天に対してドコモが距離を取るようになったことが影響していると考えられる。
KDDIは楽天と、ローミング以外の分野でも提携することによって、楽天の持つリソースを活用できるだけでなく、通信事業に関しても他の2社に対して共同戦線を取る可能性が出てきた。両社はあくまで提携分野以外では競争していく方針を示しているが、KDDIと楽天の競争色が薄まったことで、行政側が期待している競争を激化させにくくなった可能性もあるだろう。
では、楽天は今回の提携、そして料金についてどのような見方を示しているのだろうか。楽天の副社長執行役員である山田善久氏は、2018年11月8日に実施された決算説明会で、「他社がどうというより、ユーザー目線で魅力的な価格を提供する」と答えるにとどまっており、サービス開始時の料金施策は明らかにされなかった。
一方で楽天側が強調していたのが、ネットワーク構築に向け数百人態勢で基地局設置場所の交渉を進めたり、基地局の全国設置を前倒ししていくと説明したりするなど、ネットワークインフラに関する取り組みである。ゼロから携帯電話事業をスタートする楽天の本音は、料金競争よりも、不安視されているネットワークの充実で信頼を勝ち取りたいということなのだろう。
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