創業87年を迎えた教育系の老舗出版社である旺文社。参考書や受験教材で知られる同社が5月に立ち上げた“EdTech”コーポレートベンチャーキャピタル(CVC)である旺文社ベンチャーズは10月29日、初の出資先に、子ども向けのオンライン英会話サービス「GLOBAL CROWN(グローバルクラウン)」を運営するハグカムを選んだことを発表した。
出資額は非公開だが、同社は今回ポーラ・オルビスホールディングスからも出資を受けており、合わせて数千万円規模と見られる。
旺文社ベンチャーズでは、認知科学や教育用ロボット、AI、VR、ARなどの最新技術を活用したEdTech領域や、学校現場における学び方・教員の働き方を変えるようなサービスを出資対象にしている。また、単に資金を提供するだけでなく、旺文社グループが長年培ってきた教育分野におけるノウハウや、参考書など豊富な学習コンテンツ、さらには学校(小中高大)や塾、書店などとのネットワークを、出資先のスタートアップに提供できる点も強みとしている。
旺文社ベンチャーズ代表取締役社長の本多輝行氏によれば、7月の発表直後からEdTech企業を中心に100件近い問い合わせがあり、反響の大きさを実感しているという。「1日5件近く、ベンチャー企業や投資家の方々とお会いする日々が続いている」(本多氏)。企業規模はさまざまで、相談内容も自社のプロダクトをともに改善してほしい、プロダクトをピボット(方向転換)したい、学校とつなげてほしい、など幅広い。現在その中から数社に絞ってコミュニケーションを続けているという。
「(旺文社ベンチャーズを立ち上げたことで)親和性がありそうな企業や、困っている企業が明らかになり、コンテンツやブランド、プロモーションなどの面で、われわれがお手伝いできるところも少なくないと感じた。投資はいらないので学習コンテンツを使いたいという問い合わせもあり、担当部署を紹介することもある。学校や書店などのネットワークもプロモーションに活用できそうだ」(同社取締役の粂川秀樹氏)。
100件近い問い合わせの中から、同社が出資先第1号に選んだのが、子ども向けのオンライン英会話サービスであるGLOBAL CROWNを運営するハグカムだ。
GLOBAL CROWNは、3~12歳を対象としたマンツーマンのオンライン英会話スクールで、2015年11月にサービスを開始した。フィリピン人講師によるSkype英会話サービスなどが多い中、日本語と英語が話せるバイリンガル講師にこだわっていることが特徴だ。また、日本だけでなく海外にいる講師も3割におよぶという。レッスン受付時間は平日の15~21時で、1回のレッスン時間は30分。月額料金(月謝)は9800〜1万9800円。
ユーザー数は公開していないが、年齢層は4〜8歳を中心に分散しており、特に英語の授業が始まる小学校入学前後で二分しているという。サービスを利用して半年後の継続率は85%前後とかなり高く、週2~3回のペースで学んでいる子が多いとのこと。習いごとの送り迎えが難しい共働きの世帯の利用者が多く、母親が晩御飯の支度をしている間に、リビングで子どもが英会話を学ぶといった利用シーンが多いのだという。
現在は、スピーキングに特化したレッスンを提供しているが、大学入試では英語4技能化(リーディング・リスニングに、スピーキング・ライティングを追加)が進められていることから、12月にはライティングも含めた4技能すべてに対応したレッスンのサービス開始を予定している。また、今後は英会話以外のジャンルのレッスンも提供することで、子ども向けの“オンライン習いごとプラットフォーム”を目指すという。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」