モバイルアプリ運営プラットフォーム「Yappli」を提供するヤプリは10月19日、都内でプライベートイベント「YAPPLI SUMMIT 2018」を開催した。
基調講演では、「進化するモバイルテクノロジーが変える私たちの生活とは」と題し、Niantic アジアパシフィック プロダクトマーケティング シニアディレクターの足立光氏、AR開発ユニット「AR三兄弟」の長男である川田十夢氏、電通 ビジネス・デベロップメント&アクティベーション局 イノベーション戦略室 新領域開発部部長の足立光氏(先述の足立氏と同姓同名)が登壇した。
Nianticの足立氏は、元日本マクドナルド上席執行役員マーケティング本部長(CMO)で、日本マクドナルドほか、複数の赤字企業の立て直しに成功した実績を持つ。 AR三兄弟の川田氏はAR開発者で、“通りすがりの天才”として情熱大陸などテレビ番組にも多数出演している。 電通の足立氏は、AR・VRを活用した広告などを開発。VR事業を推進する社内タスクフォース「電通VRプラス」のコアメンバーで、ロケーションVR協会の理事もしている。
講演では、Nianticの足立氏がマーケターおよびユーザーの立ち位置でモデレーターを務め、川田氏がAR(拡張現実)サービスの開発者、電通足立氏がVR(仮想現実)を中心としたビジネス創出者として、それぞれの視点を交えながら、ARやVRの有効活用が導く近い将来像、そしてサービス成功・実現に向けたアプローチについて語った。
今後われわれの生活を豊かにする、さらなるモバイル発展の鍵となるテクノロジとはいったい何か。モバイルの便利さという側面はある程度実現されたが、今後はそれに加えて楽しさや感動体験が求められるのではないか。それを実現するための、キーテクノロジとなるのが、ARやVR、MR(複合現実)といったいわゆる「xR技術」だ。
ARもVRも注目度は高く、市場にはすでに多種多様なサービスやコンテンツが登場している。たとえば川田氏は、さまざまなユニークなARシステムを開発している。星の明るさを調光してプロジェクトマッピングで表示でき、六本木ヒルズの展望台の窓に東京の夜空やパリの夜空など、好きなシーンを呼び出せる拡張現実「星にタッチパネル劇場」などだ。
ほかにも、映画監督の新海誠氏との共同制作で中国の展示会で発表したデモが有名だ。巨大な会場内に雲の映像を映して、デバイス上から雲の映像を会場に設置してあるシアターに投げると、映画「君の名は」のワンシーンがよみがえるもので、スマホにアプリをダウンロードして、その中で見える映像世界で展開するという、一般的なAR像にとらわれないコンテンツを多数開発している。
「ARには、スマホの中で完結するものもあるし、地域とか環境とか、そこにある機材を使ったものがある」と川田氏は説明する。ほかにも、外の音がそのまま聞こえるイヤホンや、ジェスチャーで操作できる指輪型のウェアラブルデバイスなど、拡張現実にはスマホを使ったもの以外にもさまざまなパターンのものがある。
ただ、商業化ではNianticの大ヒットゲーム「Pokemon GO」以外は、そこまで成功していないのが実情だ。電通足立氏も、以前カタログとタレント映像を使ったファッションアプリを公開したが、「たくさんダウンロードされたが、運用の大切さに気づかず失敗した」経験があるそうだ。一方のVRも「端末が普及していないので、まだ成功している例はない」状態だという。
そのなかで、8月に「Magic Leap One」という眼鏡型ウェアラブルデバイスが米国で発売されたが、「これが世の中を変えていくかもしれない」と電通足立氏は期待する。Magic Leapは、ARによって自分の眼鏡感覚で世の中にさまざまな情報が拡張されるというもの。「自分に必要な情報だけがプロットされて友だち同士がつながったり、買い物が楽になったりする」(電通足立氏)。イメージとしては、「漫画のドラゴンボールのスカウター、COBRAの左目のようなもの」(Niantic足立氏)で、電通ではユーザーの行動履歴を集めてARサービスに生かしていくことを考えているという。
また川田氏はARについて、「以前セカイカメラがARで失敗したのは、誰でも見られるものを表示して情報だらけにしてしまったから。次のARでできるのは、買い物の“目利き”とか、特売品情報とか。専門家の目で見たときに世界をどう表現するかを見せたときに次のインパクトになる」との見解を示す。「技術的に見れば、2〜3年後には実現しているかもしれない」。
Niantic足立氏がビジネス化にあたって重要視するのが広告だ。「今の現実世界のほかにAR・VRの世界では何重もの違う世界、パラレルワールドがある。今以上に見ているものが細分化して、同じ現実の中でパラレルワールドが増えていく」ことを指摘する。
電通足立氏も、「ARよりVRのほうがそれに近い」と同調。「VRを広げていくためには、単純に面白いものやいろいろな世界が見えるのではなく、コミュニケーションツールになっているかどうかが重要。パラレルワールドに友だち同士で一緒に行けるか」と指摘。その上で、「広告スペースとなる隙間はたくさんある。人が集まるところは広告のチャンス。可能性は非常に感じている」と事業化に手ごたえを感じている。
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