音楽聴き放題「AWA」と動画アプリ「TikTok」が“本気”のタッグ--年内に約500万曲を提供へ - (page 2)

AWAとTikTokは「相性がいい」

 両社が最初にコンタクトをとったのは2018年の6月。井藤氏が前職から親交のあったエイベックスとコミュニケーションした際に、AWAの小野氏を紹介され、すぐさま意気投合。「その翌々週には2人で北京の(Bytedance)本社に一緒に行き、とんとん拍子で話が進んだ」(井藤氏)という。

 AWAでは、プレイリストやレコメンド機能などを通して、ユーザーと“新たな音楽”と出会ってもらうことに最も価値を置いているが、「僕らと全然違う角度で音楽と出会えるのがTikTokだった。一緒に何かできないかと思っていた」と小野氏が話すと、井藤氏も「個人的には、AWAのUIやプレイリスト、ムードなど、直感的な音楽へのアクセスの仕方が、TikTokとものすごく似ていて、相性がいいと思った」と返す。

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 今回の連携によって、DA PUMPや倖田來未といった人気アーティストの楽曲約2万5000曲が、TikTokの動画撮影時に使えるようになる。さらに、2018年内に約500万曲まで楽曲数を増やす予定だという。従来は、TikTokがグローバルで契約していたワーナーミュージックとユニバーサル ミュージックの楽曲を使用していたが、ここに国内の人気アーティストの楽曲が一気に加わることになる。

 「TikTokとしてもインパクトのある数字。ユーザーの皆さんは、われわれが想像もしないような楽曲の使い方や、遊び方をしていて、学ぶことの方が多い。そういう意味では、楽曲が増えることでまた新たな遊び方が生まれるのでは」と井藤氏は期待する。また、TikTokでは一昔前の楽曲や海外の楽曲などが動画に使われてヒットする事例も少なくないことから、レーベル側も“旧譜の再ヒット”などに期待し、楽曲提供には前向きなところが多いという。

「フル再生」機能など一歩踏み込んだ連携も

 このほかアプリ間の機能連携として、TikTok内にAWAの公式チャンネルを開設するほか、AWA内にTikTokへのシェア導線を設ける。実際、AWA内でもTikTokで人気の楽曲をピックアップしたプレイリストが増えていることから、ユーザーの親和性も高く、シームレスな形で連携できると考えているという。

 さらに、一歩踏み込んだ機能連携が、AWAに登録しているユーザーが、TikTok上で音楽をフル再生できる「音楽プレーヤー」機能だ。この機能の意図について井藤氏は、「TikTokで流行った楽曲はたくさんあるが、最終的に『この曲、何の歌?』となり、結局は他の音楽サービスなどで探す手間が発生していた」と現状の課題を挙げ、同機能がその解決策になるのではないかと見ている。

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 小野氏も「僕らは世界中の音楽レーベルとつながっているので、すぐに楽曲を集めることができる。このパワーをTikTokにお預けして、ユーザーがたくさんの音楽と出会えば、必ずフルで聴きたいというニーズが出てくる。でも、そこでAWAアプリに誘導するよりは、TikTok上でフル再生できたほうがいいに決まっている」と、あえてTikTok上でフル再生できるようにした経緯を明かした。

 両社の連携によって、日本の若年層の音楽に対する意識も変えていきたいと小野氏は話す。「TikTokのように若い人たちが熱狂して集まっている場所から、定額制音楽サービスへのルートがちゃんとできると、絶対に違法アプリや動画サイトなどで聴くよりも、良い音質、良い環境で音楽が聴けるので、『全然違うじゃん』という感覚を早い段階から持ってもらえるのではないか。お金を払うか、払わないかはそれぞれの価値観だが、だからこそ僕らはFreeプランも用意している。長い目で見て、若い人がもっと音楽を楽しめるようにしていきたい」(小野氏)。

 今後は、サービス間の連携にとどまらず、新人アーティストの発掘やオーディション、オリジナル楽曲の制作、プロモーション・キャンペーンなども共同で展開していくという。「TikTokの中でもっとスターが出てくる。そうなったときに、定額制音楽サービスである僕らやエイベックスが、さらなる大きなスターに育てるルートも作れると思う。この3社は得意領域がそれぞれ違う。スターを生み出す場所になり、育てる場所になり、それを配信する場所になれば面白いのでは」(小野氏)。

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 ただし、コラボを通じてさまざまな取り組みを進める上で、特に注意を払わなければいけないのが、TikTokの“コミュニティの世界観を壊さないこと”だと井藤氏は語った。「単純なタイアップではコミュニティには受け入れてもらえない。どういった形がベストなのかは、僕ら自身も成功法や方程式はもっていない。特に若い世代の音楽のタッチポイントは彼らにしかわからない。今あるTikTokのコミュニティを崩さない形で、『こういうものもあるんだよ』という、イントロデュースになるようなものをAWAと一緒に考えていきたい」(井藤氏)。

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