NTTドコモは10月17日、金融機関が同社の回線利用者に向け、安心して利用できる融資サービスを提供するための「ドコモ レンディングプラットフォーム」(以下、レンディングプラットフォームに)を提供することを発表。同日に実施された記者会見では、その狙いと詳しい内容が明かされた。
NTTドコモ代表取締役社長の吉澤和弘氏はまず、同社のFinTechに関するこれまでの取り組みを紹介。同社では現在、「キャッシュレス・決済」「投資」「保険」「レンディング」をFinTechの重点分野として位置付けており、これらのアセットを活用しながらパートナー企業との協創によってサービス開拓を進めているという。
すでにキャッシュレスと決済に関しては、QRコード決済の「d払い」やクレジットカード「dカード」を展開しているほか、投資に関しても「dポイント」を活用したポイント投資などを提供。さらに保険に関しても、東京海上日動とAIを活用した保険サービスを打ち出しており、2019年上期にサービスを開始する予定だ。
そして今回新たに発表されたのが、残り1つの重点分野となるレンディングに関する取り組みで、金融機関向けにレンディングプラットフォームを提供するという。金融機関がこのプラットフォームを活用したサービスを提供するというB2B2Cの形で、ドコモの回線契約者に対してレンディングサービスを提供していく形になる。
吉澤氏によると、このプラットフォームの特徴は大きく3つあるという。1つは「ドコモスコアリング」で、NTTドコモが回線契約者の利用状況などから取得したビッグデータを基に、独自の顧客信用スコアを算出。その内容を金融機関での審査に活用することで、顧客1人1人により適した融資が可能になるという。
2つ目は専用のスマートフォンアプリ「レンディングマネージャー」。スマートフォン上から融資の申し入れができるほか、借り入れ状況を確認することも可能で、家計に余裕がある場合は繰り上げ返済を提案するなど、アドバイスする機能も備えているという。
そして3つ目は、ドコモの他のサービスとの連携である。具体的には、同社が提供するバーチャルウォレットサービス「ドコモ口座」と連携し、融資資金をいつでもドコモ口座に入金できるほか、スマートフォンとQRコードを用いることでセブン銀行のATMから直接出金もできるとのこと。
このうちレンディングマネージャーは、マネーフォワードと共同で開発されたものになる。そこで会場には同社の代表取締役社長CEOである辻庸介氏も登壇し、今回の取り組みについて説明した。
辻氏によると、お金を借りることは住宅ローンのように生活の幅を広げるなどのメリットがある一方で、お金の借り方や、借り入れ後の返済に対して不安も大きいという。実際、カードローンを利用した人のうち、延滞経験がある人も全体の30%に上るとのこと。そうした問題をテクノロジで解決するべく今回の共同開発に至ったとのことだ。
実際レンディングマネージャーでは、アプリを通じて借り入れと収支を自動で可視化し、データを基に借入額や返済に関するアドバイスをすることで、適切な返済計画が立てられる仕組みを用意していくとのこと。「今回は新しいチャレンジ。テクノロジをサービスに生かすことで、お金を借りることの問題を解決していきたい」と辻氏は意欲を見せた。
吉澤氏はさらに、このレンディングプラットフォームを採用したサービスの第1弾として、新生銀行グループが2019年3月からレンディングサービスを開始する予定であることを発表した。新生銀行の代表取締役社長である工藤英之氏は、金融事業者の立場から「高度なFinTechのサービスがスマートフォンという身近なデバイスを介して提供されることで、とっつきにくく難しいイメージのある金融サービスが、これまでにない分かりやすい形で提供できる」と話す。
新生銀行は顧客に適したレンディングサービスを提供する上で、オープンで柔軟性のあるプラットフォームの存在が重要と考えており、ドコモのプラットフォームがその文脈に沿ったものであったことから採用に至ったと説明。同社のサービスでは個人向けに数万円から数十万円程度の貸し出しを想定しているそうで、ドコモスコアリングを審査に活用することで、結果によっては優遇金利が受けられるなど、個々の顧客に最適な条件の提案が可能になる仕組みを用意するとしている。
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