日立製作所とKDDI総合研究所は10月11日、スマートフォンやタブレットのカメラで撮影した掌紋(手のひらの皮膚紋理)から公開鍵認証(利用者の電子署名生成と署名検証)を行なう掌紋向けPBI(生体認証基盤)技術を開発したと発表した。顔認証と組み合わせることで“手ぶら決済”が実現するという。
この技術では、汎用カメラで取得した生体情報を用いて、電子署名に必要な秘密鍵を一時的に生成して利用できるため、秘密鍵の管理を不要とし、機微情報の漏えいやなりすましの防止効果を高められる。スマートフォンなどのカメラで生体認証できるため、専用装置も不要。家庭や外出先など場所を選ばず、電子商取引やネットバンキングなど、さまざまなオンライン取引において本人認証が可能となる。
さらに、1台のカメラで、顔や掌紋の情報を同時に取得して高精度な公開鍵認証を実現する、マルチモーダル認証処理を開発。顔による対象者の絞込みと掌紋向けPBI技術を組み合わせた手ぶら認証を実現し、店頭でのスムーズでセキュアな手ぶら決済も可能という。
汎用カメラを用いた生体認証では、本人の写真や動画によるなりすましのリスクがあるため、ディープラーニングなどの機械学習を活用し、撮影画像が本物か偽物かを見分ける生体検知技術も合わせて開発している。
今回のPBI技術は、揺らぎのある生体情報を安全な形式で電子署名に使える日立製作所独自のPBI技術と、KDDI総合研究所が開発した汎用カメラを用いた掌紋認証技術を組み合わせ、新たに掌紋画像の「位置ずれ補正処理」ならびに「揺らぎ低減処理」を開発。専用装置が不要で、スマートフォンなどのカメラのみで実現できる生体認証を開発した。
掌紋向けPBI技術では掌紋画像を保存しないため、掌紋画像を使わずに位置ずれを補正する必要がある。そこで、手のひらの輪郭情報を補助情報として、輝度の揺らぎに影響されにくい位相限定相関法による補正を行うことで、掌紋画像が不要となる位置合わせを実現している。
また、PBI技術はある程度の揺らぎを吸収して本人認証を可能としているが、カメラに手のひらをかざして撮影する場合、手の開きや照明環境の違いなどから、安定した本人認証の実現が難しいという。このため、本人認証時に手の開きや照明環境の違いを反映した複数種の掌紋画像を生成することで、判定の確率を高め、認証の高精度化を実現した。
また、日立製作所は汎用カメラを使った指静脈技術の開発にも取り組んでいる。生体認証のラインナップを拡充し、マルチモーダル化を進めることでさまざまなニーズにも応えていくという。
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