トヨタとソフトバンクという、日本の時価総額ランキングで1位と2位に君臨する企業が、自動運転時代を見据えたMaaS(Mobility as a Service)事業で手を組んだ。
新たなモビリティサービスの構築に向けた新会社は「MONET Technologies」。トヨタが構築したコネクテッドカーの情報基盤「モビリティサービスプラットフォーム(MSPF)」と、スマートフォンやセンサからのデータを収集・分析するソフトバンクの「IoTプラットフォーム」を連携。車や人の移動に関するデータを取得することで、需要と供給を最適化し、移動に関する課題を解決するという。
事業の具体例としては、過疎地域での交通弱者、買い物困難者の救済、地方交通の課題解決などを挙げており、2018年からは人が運転するオンデマンドサービスを開始。2020年代半ばまでには、移動、物流、物販など多目的に活用できるトヨタのモビリティサービス専用電気自動車「e-Palette」による「Autono-MaaS(オートノマース)」事業を展開する予定だ。e-Paletteは、中身をカスタマイズできる自動運転車で、ライドシェア、ショップ、病院、飲食などさまざまな用途に対応する。
今回の提携については、トヨタから声を掛ける形でソフトバンクと若手を中心にワーキンググループを組成し、提携に向けて検討したという。発表会に登壇したソフトバンクグループ代表取締役会長兼社長の孫正義氏は、提携の話について「最初聞いたときは『本当か』と驚いたというのが正直な感想」としつつ、「流れは自然にそういう方向にあったのかなと非常に嬉しく思った。世界のトヨタと我々が提携して事業を開始できると思っただけでワクワクする」と高まりを見せた。
ソフトバンクは、“モビリティAI群戦略”と銘打って、10兆円規模の「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」などを組成し、中でもモビリティ関連のAI企業に注力して投資している。ライドシェアであれば、Uber、DiDi、Grab、OLAに筆頭株主として出資しており、世界のライドシェア市場の9割を抑えているという。また、GMグループの株式20%を取得したほか、GPUや自動車向け半導体で急速に勢力を伸ばすNVIDIAへの出資、モバイル機器のほか、サーバ用プロセッサ事業にも進出するArmの子会社化など、モビリティサービスからAI関連まで広く出資している。
孫氏は、ライドシェアの日本語訳としてたびたび使用される「配車アプリ」という言葉を持ち出し、「日本だと配車アプリと呼ぶが全くの見当違い。呼び出しアプリというイメージだが、私に言わせればそれは過小評価。あくまでも、モビリティのプラットフォームであり、AIを使ったサービスのプラットフォームだと思う」とし、膨大なクルマ、人の移動データをもとに、未来の需要を予測しながらそのエリアに何台の車が必要かをリアルタイムで配車できるモビリティサービスの可能性について説いた。
また、今回の提携は、トヨタにとって自動運転車の“購入者”としての期待もあるようだ。自動運転車が最初に市場に出回るタイミングでは、1台当たり数千万円になるだろうと孫氏は述べており、一般顧客よりも業務用としてライドシェアサービスなどでの活躍が期待できるという。孫氏は「ライドシェアで世界の9割の市場を持っており、(自動運転車の)最大の顧客になるのでは」と予測。トヨタとの提携についても「MONETは第1弾であり、第2、第3のより深くて広い提携が進むことを願っている」と、今後の含みを持たせた。
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