セガサミーホールディングス(以下、セガサミーHD)およびFenox Venture Capitalは、大崎の新オフィスにコワーキングスペース「TUNNEL TOKYO(トンネル東京)」を設置し、10月1日から稼働を開始。それに先立ち、9月27日にオープニングセレモニーを開催した。
TUNNEL TOKYOは1402平米の面積に、約80席のオープンラウンジや会員専用エリア、貸しオフィス、8部屋の貸し会議室を備える。貸しオフィスおよび会員専用エリアは、年末年始やゴールデンウィークなどの長期休暇を除いて24時間稼働。既にFenox Venture Capitalやドローン関連事業のAerial Lab Industries、IT系企業のティーアンドエス、三笠製作所が新設するeスポーツチーム、野球データ解析などを手掛けるネクストベース、以上5社の入居が決まっている。
多くのコワーキングスペースは集う人の利便性を鑑みて、渋谷や六本木、丸の内など都心でも中心地に設けるのが通例である。TUNNEL TOKYOがある住友不動産大崎ガーデンタワーは、大崎駅から徒歩10分足らずで、お世辞にもアクセスしやすいとは言い難い。だが、セガサミーHDは、「(大崎にコワーキングスペースを)設置することは一部の役員からも反対の声があった」(セガサミーHD 代表取締役社長 グループCOO 里見治紀氏)ものの、多くの差別化で断行したと語る。
その差別化要因は「ビジュアルで勝負」(里見氏)だと強調する。会員エリアとオープンラウンジをつなぐビッグゲートトンネルはLEDで演出を施し、オープンラウンジにもLEDディスプレイを配置。利用者はリラックスするよりも高揚感を得やすいだろう。セガサミーHDは、「カフェテリアを併設し、(会員は同社)社員食堂も使えるため、弊社社員とのコミュニケーションも図れる。さらにビッグゲートトンネルを抜けた先には10歩でコンビニもある」(里見氏)と会場の笑いを誘った。
セガサミーHDがコワーキングスペースを設ける狙いに、スタートアップとの相乗効果を見込んでいるのは明らかだ。同社は「最大の差別化は(コワーキングスペースが)セガサミーグループの中にある点。多くの企業やスタートアップの皆さんと、一緒にオープンイノベーションを起こしていく。現在五反田に注目が集まっているが、大崎も○○バレーと言われ、スタートアップの中心地に数えられるように努力したい」(里見氏)と意気込みを述べている。
共同運営社代表として登壇したFenox Venture Capital CEOのAnis Uzzaman氏は、「時代の変化とAI~ハードウェアの進化~」とついて語った。端的にまとめるとシリコンバレーを始めとするスタートアップ界隈では、CPUからGPU、TPU(Tensor Processing Unit)へ注目が移り変わっているという。例えばCPUとGPUを比較するとCPUは8コアだが、GPUは512コア。処理速度は最大100倍となる。Googleが開発したTPUは機械学習に特化した特定用途向け集積回路だが、その処理速度はGPUの最大30倍、性能比も最大80倍(ワットあたり)だという。
このように流行が移り変わっている現状は多くの場面で語られているものの、「TPUを扱うベンチャー20社中15社はシリコンバレー、残り5社は中国。日本でTPUを開発するベンチャーが登場していない」(Uzzaman氏)と指摘する。だが、既に流行は人間の脳を模して感覚を備える「Neuromorphic Chips(ニューロモーフィックチップ)」に移りつつあるという。既にIBM TrueNorthやIntel LOIHIなどニューロモーフィックチップは大手企業も取り組んでいるが、注目すべきは半導体スタートアップのRain Neuromorphicsだ。人間の脳内には860億ものニューロン(神経細胞)が存在し、情報処理や情報伝達を行っているが、同社のチップは10億ニューロンのシミュレーションに成功したという。
このようにソフトウェアやチップレベルでは進化が進むものの、「ハードウェアの進化が追いついていない」(Uzzaman氏)と警鐘を鳴らす。その解となるのが量子コンピュータである。既にGoogleやIBM、Microsoftなど多くの企業が主要プレーヤーとして先を争っているが、量子コンピュータの成り立ちとなったD Waveはスタートアップだ。現在はハードウェアアプローチで量子コンピュータを開発するRigetti Computingや、ソフトウェアから量子コンピューターの可能性を広げるQC Wareといったスタートアップが数々登場している。「QC WareにはFenoxファンドを通じてセガサミーHDが2018年8月に日本初の出資を行った。世界各国は量子コンピュータに対する研究費として、米国は年間200億円、英国は年間100億円、中国は1兆円。だが、日本は2018年4月からようやく年間30億円の予算を組んだ。日本はもっと投資すべきだ」(Uzzaman氏)と、政府による支援規模の小ささを指摘した。
TUNNEL TOKYOに対しては、「スタートアップと大手企業」「“人と人”によるネットワーキング」「新しい技術と古い技術」と3つのキーワードを並べつつ、「技術もビジネスもTUNNEL TOKYOで学び・生まれる魅力的な場になることを期待したい。ビッグゲートトンネルをくぐると弊社があるので、各企業にはシリコンバレーへの展開話や資金の話もできる」(Uzzaman氏)とTUNNEL TOKYOに対する意気込みと可能性を強調した。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス