シャープ「量から質へ」転換する中国市場の戦略--2019年に売上高前年比20%増目指す

 シャープは9月27日、中国・深センにおいて、中国市場における事業戦略について発表した。あわせて、ディーラー大会も開催。9月22日付で、中国代表に兼任で就任したシャープ代表取締役会長兼社長の戴正呉氏自らが方針を説明した。

シャープ代表取締役会長兼社長の戴正呉氏
シャープ代表取締役会長兼社長の戴正呉氏
中国市場における事業戦略を発表した
中国市場における事業戦略を発表した

 戴会長兼社長は「中国市場においては、2019年に、売上高では前年比20%増とする計画であり、このうち、50%を大型テレビで伸ばしたい」と語った。

 会見およびディーラー大会のテーマを、「新夏普(新シャープ)、新百年」としたように、戴会長兼社長は、これまでのシャープの歴史に触れながら、今後の方向性などについて説明した。

 戴会長兼社長は「シャープは、創業106周年を迎えている。その歴史は貴重である。欧米では100年を超えた企業は多いが、日本では数少ない。シャープが長い歴史を持つことができたのは、『職人精神』を持っているからである。創業者の早川徳次氏は、シャープは『他社に真似される商品を作れ』といってきた。シャープは、1915年にシャープペンシルを発明し、その後、日本初のラジオ、日本初の白黒テレビ、そしてカメラ機能を備えた最初の携帯電話を開発した。さらに、シャープは、液晶を発明した会社であり、液晶の父といえる。また、シャープは8Kで先行し、これまではシャープだけが8Kを出していると言われたが、2018年のIFAでは、各社が8Kテレビを出してきた。だが、シャープは、8Kカメラなどを投入し、さらに先行している。シャープだけが、8Kエコシステムを準備できている」と語った。

 また、「世界的に有名なロボットは、ソフトバンクとシャープが出しているが、どちらも鴻海のフォックスコングループで生産したOEMである」としたほか、「中国では、食物や空気の問題が深刻である。シャープは、健康・環境商品を開発している」、「シャープの企業ビジョンは、8KとAIoTであり、AIoTという言葉を発明し、これを登録している。シャープは、8KエコシステムとAIoTで世界を変えようとしている」などと述べた。

 さらに、プロゴルファーのタイガー・ウッズ氏が、5年ぶりにツアー優勝したことに触れながら、「私は非常に感銘を受けた。シャープも同じであり、5年間の苦しい期間があった。私は2016年に65歳で、40年ぶりに日本に駐在したが、その際にシャープを2~4年間で黒字化することを宣言し、2017年3月には黒字になった。2017年12月には、東証一部に復帰した。日本で一部に復帰した企業はほとんどない。それは日本における奇跡を達成した瞬間であった。現在も、シャープは黒字を維持している」などと語った。

低価格から質重視へ、戦略を転換

 一方で、中国市場の取り組みについては「シャープをグローバルブランドとして推進していきたいと考えており、中国は重要な市場になる。私は、中国代表という立場で本拠地(中国)に戻り、中国市場における新たなスタートを開始する」とし、「当初中国では、富連網に販売委託をしたが、その成功を基盤として、体制を再構築する。また、ブランド価値やイメージを重視し、量から質への転換を図る考えであり、100以上のスマート商品を中国に導入する予定である。そして、日本と同様に、信賞必罰の手法を中国でも導入する。シャープは『Be Original.』を掲げており、『誠意と創意』という初心に戻ってビジネスを進め、中国市場に革新的な製品やサービスを紹介したい」と述べた。

 富連網は、低価格戦略を中心にして、2年間で300万台のシャープブランドのテレビを販売した実績を持つが、シャープ独自体制への転換に伴い、質を重視するという。

 質への転換としては、シャープは、液晶テレビの「AQUOS」シリーズにおいて、新たなラインアップとしてスマート機能を搭載した「睿視(Smart SHARP & Good Quality)」を展開。さらに、8Kなどの高級機である「曠視(こうし)」を展開し、テレビ事業の高付加価値化を加速するという。

新たなラインアップとしてスマート機能を搭載した「睿視(Smart SHARP & Good Quality)」を展開する
新たなラインアップとしてスマート機能を搭載した「睿視(Smart SHARP & Good Quality)」を展開する

 戴会長兼社長は、これまでは日本や東南アジア、欧州でのビジネスを優先したことで、中国市場への本格展開が遅れたことに触れ、「中国は、フォックスコンを通じて、最も土地勘があり、強い地域だったが、鴻海の郭台銘会長と相談し、富連網に任せた経緯があった。シャープの改革を進め、業績も安定してきたことで、2018年10月1日から、中国市場に本腰を入れ、自力で開拓していくことにした。シャープは、2020年には海外売上高比率8割を目指しており、これを実現するためには、中国市場での事業拡大は欠かせない。中国は、世界第2位のマーケットであり、ここに本格的に入らなければ、真のグローバル企業とは言えない」としたほか、「シャープ独自のクオリティを始め、日本発の技術や商品を中国市場に投入してほしいというニーズが高まってきた。質を重視して商品を投入する。これまでは、上海や北京、広州などのT1地域を対象にしてきたが、今後は、T3~T6の地方も攻略したい」と語った。

 また「ASEAN市場は今後、前年比20%増の成長を期待している。さらに2019年からは、米国市場に力を入れていく。グローバル事業は、毎年拡大していく考えである」とも述べた。

 なお、米中貿易摩擦の影響については、「あまり影響はないと考えている。将来は、米国やメキシコで生産したいと考えており、将来の為替レートの方が業績に影響してくるかもしれない」とした。

発表会場
発表会場
戴正呉氏(右から3人目)を中心にフォトセッションも行われた
戴正呉氏(右から3人目)を中心にフォトセッションも行われた

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