シャープの代表取締役会長兼社長戴正呉氏は9月27日、社内イントラネットを通じて、社長メッセージを配信した。
冒頭、9月15日に創業106周年を迎えたことを報告した今回のメッセージでは、「真のグローバル企業の実現に向けて、次のステージへ踏み出そう」とのタイトルで、ドイツで開催された「IFA 2018」への出展を報告したほか、中国やASEANなどの海外事業への取り組みなどについて触れるものになった。
戴会長兼社長は「過去1年で、ASEANでの事業が着実に伸長しており、欧州においても、日に日にシャープの存在感が高まっている。中期経営計画で示した通り、次の100年も持続的に成長し続けるためには、戦う市場のトランスフォーメーション、すなわち、グローバル事業拡大が極めて重要な課題の1つであり、これからも取り組みを一層強化したい」とした。
最初に触れたのが、8月31日からドイツ・ベルリンで開催されたIFA 2018についてだった。
「シャープは、2017年から出展規模を拡大し、欧州における事業を本格的な拡大フェーズに移行したことを積極的にアピールした。特に80型、70型、60型の『AQUOS 8K』や、サウンドバー、8Kマルチディスプレイを展示するとともに、8Kカムコーダーの撮影デモを行うなど、2017年に引き続き、8Kエコシステムを大々的に訴求した」とし、「サムスンや中国TCLが8Kテレビの新製品を初めて発表するなど、2017年と比較して、8Kを展示する企業や製品ラインアップが大きく増加。8K市場拡大の兆しを見ることができた。以前は『シャープ、8Kテレビ“一人旅”』と揶揄されたこともあったが、今ではさまざまな企業が、8Kのリーディングカンパニーであるシャープのあとを追っており、8K市場拡大の流れは一段と加速している」と位置づけた。
また「日本では12月1日から世界に先駆けて8K放送が開始される。シャープは、これに先立ち、10月16日から開催される『CEATEC 2018』で、日本におけるAQUOS 8Kの第2の展開を発表する。こうした取り組みを確実に成果につなげ、『8K=シャープ』を確固たるものにする」との姿勢をみせた。
さらに「IFA 2018では、スマート家電やスマートホームの展示も活況であり、各社がこぞって音声アシスタントをはじめとして、AIやIoTを活用したさまざまな取り組みを訴求していた。こうした中、シャープのブースでは、AIoTの中心的な役割を担うスマートフォンをラインアップ展示したが、特に日本のメーカーとして初めて開発した日本製フレキシブルOLEDパネルを搭載することで、ディスプレイ全体を緩やかな曲面にしたフルカーブドディスプレイスマートフォンが大きな注目を集めた」と報告。「具体的な仕様や展開地域などについては近日発表するが、これを起爆剤に、スマートフォン事業を一層拡大していきたい」と語った。
2つめの内容が、ASEAN事業についてだ。9月3日に、タイの販売会社であるSharp Thai (STCL)が、タイ王国教育省職業教育委員会事務局と鴻海グループとともに、スマートシティ推進に関する覚書を締結したことに触れたのに加え、マレーシアでは、9月16日のマレーシアディに合わせて記者会見を開催し、事業戦略を説明するとともに、新たなキャンペーンの実施などについて発表。インドネシアでは9月13日に、全自動洗濯機の自社生産を開始することを決定したという。
「これにより、さらなる販売拡大を実現するとともに、ブランドイメージの向上につなげていく。今後もASEANではさまざまな観点からの取り組みを矢継ぎ早に展開し、事業拡大を一段と加速していきたい」とした。
3つめが、中国事業である。「これまではASEAN、欧州とグローバル事業拡大の大きな流れを作ってきたが、次の課題は中国である」と前置きし、「世界第2位のGDPを誇り、成長が著しい中国市場は、シャープの次の100年において極めて重要な市場のひとつになる。これまで中国市場では、経営資源の効率的活用や構造改革の観点から、鴻海グループの販売会社である富連網を総代理店とし、同社の主導によって、テレビ事業の拡大を推し進め、中国テレビ事業の基礎を構築することができた。今後は、『量から質へ』の方針のもと、新たなラインアップである『睿視(Smart SHARP & Good Quality)』を展開するなど、8KやAIoTを活用したテレビ事業の高付加価値化を加速していく。さらに、白物家電や美容家電、スマートフォン、ノートPCなど、中国市場における商品カテゴリやラインアップを大幅に拡大するとともに、AIoTを活用した新規事業の立ち上げにも取り組むことで、中国の事業構造を抜本的に変革し、売上げ、収益をより拡大していきたい」とした。
こうした方針を打ち出す一方、9月22日付で、戴会長兼社長自らが、中国代表を兼任したことを発表。「私が中国代表になったのは、こうした取り組みを確実に実行していくことを狙いとしたものであり、今後は、富連網を一代理店とした上で、私の指揮のもと、販売網を再構築していく。中国におけるさらなる業績拡大、ブランドイメージの向上を実現していきたい」とした。
戴会長兼社長は9月27日に、中国・深センで「新夏普(新シャープ)、新百年」をテーマに、記者会見とディーラー大会を開催したことにも触れ、「中国戦略について説明するとともに、シャープの幅広い商品群を展示した。今後、各都市において、発表会を順次開催し、中国全土にシャープブランドを一層浸透させていきたい」と、中国市場の成長に意気込むをみせた。
最後に戴会長兼社長は「台風21号および22号により、日本の関西圏、中国の広東省、香港など、多くの地域が被災し、これにより、部品調達や物流がストップし、業績にも一部影響が出ていると報告を受けた。9月末の上期最終日まで決して諦めることなく、全力で取り組んでほしい」とした。
また「下期はこれまで何度も検討を重ねてきた経営計画を具体的なアクションプランへと落とし込み、確実に実行したい。特に、10~12月の前半3カ月が勝負である。この間に、被災の影響による落ち込みを挽回するだけでなく、売上げ、利益をどれだけ確保できるかが、2018年度年間計画達成の鍵を握る。全員がこれを肝に銘じ、業務に邁進してほしい」と呼びかけた。
今回の社長メッセージは、グローバル戦略を加速する上で、中国での事業展開を本格化させることを宣言。自らその陣頭指揮を執る姿勢を打ち出す一方、通期目標達成に向けて、社内を引き締める狙いを持ったメッセージであったといえよう。
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