続いてマイクを握ったのは、NTTドコモでデータ分析を専門に担当しているという秋永氏。秋永氏は、計算機を回して動くAIという技術自体は、1960年代から大きく変化していないと話す。一方でここ10年を見ると、Amazon Web Service(AWS)のようなパブリッククラウドが発達。クレジットカード1枚で大量のリソースを借りることができるようになり、その結果AIの進歩が加速したという。秋永氏は、一般市民でも簡単に借りられるクラウドを市民革命に、大量のリソースが必要な機械学習を産業革命に例え、両者は補完関係にあるとした。
2012年にサービスを開始した「しゃべってコンシェル」以降、さまざまな自然対話エンジンを開発し提供するドコモ。知見を蓄えつつ、玩具やオペレータ支援、ボットの開発基盤などへと裾野を広げてきたという。
秋永氏は、会話型のインターフェースはキーボードなどの物理インターフェースと異なり、人間が自然に持っている能力を使うものだと語った。このインターフェースをさまざまな分野に適用するため、ドコモでは「あらゆるモノに対話型AIサービスを提供したい」と掲げ、「AIエージェント基盤」というドコモや他事業者が独自のインターフェースを提供できるシステムを開発しているという。秋永氏はこのAIエージェント基盤を、AndroidやiOSデバイスのみならず、スマートスピーカやゲーム、バーチャルユーチューバーなどにも応用できると示した。
鉄道事業のほか、不動産事業も手がけている東京急行電鉄。同社の事業開発室長を務める市来氏は、「暮らしのIoT」市場拡大のため、業界を横断した民間企業の集まり「コネクティッドホーム アライアンス」を立ち上げ、理事長に就任している。
アライアンスが取り扱うのは、「暮らしが豊かになる」家庭用IoTだ。市来氏は、「AIやIoTという言葉は流行り言葉。あちこちで使われているが、話している内容が異なることもある」と指摘。工場内の生産性向上を目指す産業向けIoTとは、ターゲットも内容も全く異なると解説した。
市来氏は、海外ではIoTの進歩は凄まじい一方で、日本では暮らしのIoTに関しては欧米の周回遅れだと、現状を憂いた。日本では、自社のことしか考えないガラパゴス化がビジネスの常識観念となっていると指摘。他社の製品と接続するのが当たり前のIoTにおいて、その常識観念をなんとか打破しようと設立したのが、このアライアンスだという。
アライアンスが主に取り組むのは、 具体的なサービス創出を検討する「住まいの研究会」、IoTサービス提供時の、セキュリティや責任分界点など技術面を検討する「オープンシステム研究会」、データの連携的な利活用の仕組みなどを検討する「データ活用研究会」の3つだ。単なる議論や技術的な討論のみに留まらず、実際に世の中の役に立つ活動へ繋げることを目標に掲げ、各省庁も交えた折衝による、具体的なユースケース創出に取り組むという。
市来氏は、「ガラパゴスの現状を脱して、日本にとって本当に良いIoTを作りたい」と、アライアンスの目指す方向を示した。また、アライアンスに加盟する朝日新聞社の堀江氏は、紙媒体からネットでの配信に変化した新聞と同様、住まいが変化する未来のために研究に取り組んでいると語った。
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