パネリストとして最初にプレゼンテーションを実施したのは、東北大学教授の乾氏。国内最大級の自然言語処理研究チームを率いているという乾氏は、言語処理の観点からAIについて語った。
大学や政府、SNSやマスメディアなど、世の中は言語情報であふれている。そうした言語で伝達されるような情報や知識を言語処理で少しでも解析して集約、分析、あるいは人と人とのコミュニケーションを機械が仲立ちして助けることができれば、今後さまざまな産業へ応用が広まると期待されているという。
自然言語処理の根幹は機械学習だと語る乾氏。中でも、近年さまざまな分野で注目されているという深層学習は、自然言語処理においても大きな可能性を持っていると述べた。例えば、深層学習の応用により、1人でも数日かければ上手に会話できるチャットボットのようなシステムが作れるのだという。
機械学習は、類推して学習する深層学習の概念が浸透したことにより、2010年頃に比べて誤り率が減ったという。現在のAIは基本的に機械学習をベースにしており、機械学習は手本となるデータに支えられてると乾氏は述べた。
では、機械学習は万能かというと、もちろんそうではないと乾氏は釘を刺す。複雑な問題を回答するには大量の手本となるデータが必要だが、大量の質が良いデータは、どこにでもある物ではない。また、学習できる対象はデータにある傾向のみで、学習データにない例外には弱いという。
そして一番重要なのは、機械学習では人間が与えられた問題を解くのみで、与える問題は人間が決定する必要がある。さらに言語の分野においては、機械には常識がないという問題を乾氏は挙げた。「洗濯物を干したのに雨が降った」という文章に対し、人間では「がっかりした」という感情を推察できるが、機械では行間が読むことができず、そこに限界があると乾氏は語った。
乾氏は、AIが学習できていることと、言葉を理解していることの間には、大きなギャップがあると説明。機械の得意分野と人間の得意分野は分かれており、何を機械に任せるか、何を人間がやるべきか、という役割分担を、さまざまな事例で丁寧に進めていく必要があると訴えた。
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