アマゾンジャパンの法人向けECサービス「アマゾンビジネス」が2017年9月20日に日本に上陸してから、間もなく1年が経とうとしている。企業向けのオフィス用品だけでなく、大学や病院向けの消耗品なども揃えた豊富な商品数や、請求書払いなど日本の商習慣にあわせた機能を強みにしていたが、その手応えはどうか。
1周年にあわせて来日していたAmazon.com Amazon Business担当バイスプレジデントのスティーブ・フレイザー氏と、国内事業の責任者であるアマゾンジャパン ディレクター Amazon Business事業本部 事業本部長の石橋憲人氏に話を聞いた。
フレイザー氏によれば、アマゾンビジネスは現在、米国、ドイツ、イギリス、フランス、イタリア、スペイン、インド、そして日本の8カ国で展開している。グローバルで数十万社の販売事業者(サプライヤー)がこのマーケットプレイスに参加しており、商品数は数億点におよぶという。一方のサービス利用者は数百万社におよび、世界で100億ドル以上の売上げに達しているとのこと。また、売上げの約半数が販売事業者の取り扱う商品によるものだという。
石橋氏は具体的な数は明かさなかったが、日本でも日本航空(JAL)やメガネスーパー、島村楽器、DMM.com、ナビタイムジャパン、白組、ヒューマンライフケア、すしざんまいなど、幅広い業種の企業に利用されていると話す。また企業以外にも大学や介護施設、レストランなどでの採用も進んでいるとのこと。日本では東北大学や大阪大学など6割以上の国立大学がアマゾンビジネスを利用しているという。
1年前から品揃えも増えており、教育機関向けのカテゴリでは洋書や研究資材など、製造業向けのカテゴリではセンサ、リレー、スイッチなど、医療・介護向けのカテゴリでは医療用ワゴン、介護者用シャンプーチェア、車椅子など、通常のECサイトではカバーしきれないニッチな商品も数多く取り扱っている。販売事業者の新規顧客の獲得にもつながっており、大学・研究機関向けに外付けHDDを販売するある企業は、アマゾンビジネスを開始した2017年9月から1年間で売上げが80倍以上に増加したというから驚きだ。
アマゾンは法人向けのEC事業者としては後発だったが、石橋氏はこれらの実績を挙げながら、日本のマーケットにも受け入れられたのではないかと話す。「意外だったのは、当初はオフィス用品や工具がもっと売れると思っていたが、たとえば介護施設では七夕飾りや娯楽品などイベントや生活用品が売れること。商品数が多いアマゾンビジネスならではと言えるが、販売事業者もこんなものが売れるんだという意外性はあったと思う」(石橋氏)。
日本ならではの特徴としては、「請求書払い」のニーズが非常に高いという。利用率も8カ国中トップで、年商300億円以上の企業の7割がこの支払い方法を選んでいるそうだ。都度購入ができるため、たとえば従来のように突発的に必要になったものを個人が立て替え購入して、後日に経費精算するといった手間やコストも省けると説明する。
このほか、一般消費者向けの「Amazon.co.jp」よりも法人向けの割引価格で購入できる点や、部門ごとの購買履歴を可視化できる分析機能なども利用企業などからは支持されているとした。
「世界中の多くの企業と話をすると、求められる支払い方法や税制などは国ごとに異なるが、グローバルでの課題の傾向は驚くほど似通ってる。それはトータルコストをどうやって下げるかということ。購入する商品コストだけでなく、選定コストや配送コスト、購買履歴の管理といった、あらゆる利便性をいかに高められるかが重要だ」(フレイザー氏)。
顧客の要望を聞きながら、この1年で新機能も実装した。2017年11月には利用企業が自社の従業員に購入を推奨したい、または制限したい商品にフラグを付けられるようにしたほか、2018年3月には推奨販売者も選べるようにした。また、同年7月には購入者が数量を指定してボリュームディスカウントを依頼できる「オンライン入札リクエスト」を実装している。
同社では今後も、アマゾンビジネスの強みである「品揃え」「価格」「利便性」の3つを柱にサービスを充実させることで、より多くの顧客に選ばれる法人向けECサービスを目指すとしている。
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