――GateはAIを使った不動産物件の価格の可視化というイメージですが、同様のサービスとの違いは。
先程申し上げた通り、営業先が法人です。また、多くの価格査定サービスが自宅を対象にしているのに対し、Gateは投資用不動産をターゲットにしています。そして、提供するのは物件価格の相場ではなく、家賃の下落率や数年後の売却益といった将来予測です。
――なぜ投資用不動産をターゲットにしているのですか。
自宅の購入時に相場がわかるのはもちろん必要なのですが、自宅を内見せずに決める人ってほとんどいないですよね。価格に加えて、家の間取りや周辺環境といった情報を加味して購入を判断するのが通常です。
購入の判断基準に心理的な側面が多く関わっているのが自宅だと思います。それだとITで解決できる問題は少ない。一方、投資用不動産は利回りを重視しますから、数字によるデータ分析がすごく生きてきます。内見せずに買われる方も多いため数字のパフォーマンスが重要視されます。
日本人の持ち家率は約6割と言われており、残りの4割は投資用不動産なんですね。金額にすると522兆円もある。ただ非常にいびつなマーケットで、不動産投資家は全国に320万人と数が少なく、一部の富裕層が大量の不動産を抱えている状況です。今後訪れるであろう相続問題で、それらを手放す人があらわれますから、市場の拡大が見込まれます。
――Gateによってどんなデータを得られるのでしょうか。
通常の不動産取引では表面利回り(年間収入÷購入価格)を見るケースがほとんどですが、それだと今のパフォーマンスしか説明できません。
現在、日本の不動産は過剰供給の状態ですが、それでもなお新築物件は増えています。となると家賃が下落する場所が必ず出てきます。一方で、安定した賃料を確保できる場所もありますから、できれば家賃を下げずに運用できる場所を購入したい。
例えば東京23区の家賃の下落率は30年で28%ですが、大阪では43%落ちます。同じ東京23区内でも赤坂と板橋では家賃の下落率が異なります。こうした事実は、みなさんわかってはいますが、表面利回りしか判断材料がないので、感覚的に選ぶしかありませんでした。なぜなら、データがないからです。
そこで、私たちが出した答えが「データを集める」ことでした。インターネット上に不動産データはたくさんあります。ただ、点在していたり、フォーマットが統一されていなかったりして、集めにくい。それを集めてくるクローラーを作ったのが今から約10年前です。
――現在データ件数はどのくらいありますか。
現時点で6000万件の不動産取引データを社内に持っています。それを解析するのにAIを使っています。これにより、販売価格と表面利回りしかなかった判断材料が、家賃の下落率と売却益まで考慮できるようになりました。
例えば、中野坂上の区分マンションに投資すると、家賃の下落率を加味して、売却益はどのくらい出るかが、購入時点で予測できます。ですから、頭金をいくらそろえて、金利をいくらにすれば、30年後にどのくらいの資産を得られるかがわかるわけです。
ここまでわかることではじめて、投資の比較ができるようになります。表面利回りが名古屋で12%、代々木上原に5.6%の物件があり、どちらかに投資しようかと考える時、素人目には名古屋のパフォーマンスが高そうに見えますが、実は家賃の下落率と空室率、売却の可能性まで加味すると、名古屋は3%、代々木上原は10%の利回りが導き出されます。
こうしたデータがあれば、不動産投資家の判断材料になりますし、不動産会社の仕入れ効率化や提案力の向上にもつながります。さらに金融会社にとっても、融資する際の担保価値の判断材料にも使えます。
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