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任天堂の宮本茂氏がCEDECで講演--ゲーム作りのエネルギーは“無茶ぶりと酷評と笑い” - (page 2)

佐藤和也 (編集部)2018年08月24日 11時12分
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ゲームの自由度と「マインクラフト」の成功

 ゲーム作りにおいては、以前はゲーム構造として明確なゴールを設定することを重視し、「ゲームの面白さはゴールを目指すこと」「再挑戦すること」と説明したという。宮本氏自身がゲームセンター向けのアーケードゲーム開発から始めたこともあり、当時は「失敗したら、もう一枚コインを入れる気持ちになるかが最大のポイントだった」と振り返る。一方でその後、好きなだけ遊ぶことができる家庭用ゲームが登場し、メモリなどの容量などが増加することによって、自分自身がゴールを設定するという、自由度の高い遊び方が生まれてきたという。Nintendo Switch向けの「ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド」は、移動すること自体が心地よくて楽しい感覚を持たせることに時間をかけたタイトルと説明した。

「ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド」
「ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド」

 そして「自由度が高いものが面白いものだとするならば、2Dや3D CADが面白いゲームになるのでは」と思い、エディター系のタイトルにも挑戦。かつてはスーパーファミコン向けの「マリオペイント」なども発売し、近年ではWii Uやニンテンドー3DS向けに発売した「スーパーマリオメーカー」も発売している。

「スーパーマリオメーカー」
「スーパーマリオメーカー」

 なかでも宮本氏が特に称賛していたのは「マインクラフト」の特別な成功。小さなブロックを積み上げて何かを作るブロック3Dビルダーという発想自体は昔からあり、宮本氏も実験をしていたが、おもしろい形でまとまらなかったと振り返る。「それを使ってレースゲームを作ったらどうか、アドベンチャーゲームを作ったらどうか……と、話が変な方向に進んでしまい、収拾がつかなくなった」という。

 宮本氏は、マインクラフトでコンビニを作る動画を見て驚いたとし、例えば実在するコンビニの看板がほしくなる、データを購入する理由ができると思ったという。さらに、そこまでシステムを理解して、遊び方をほかのプレーヤーに教える人が現れるというところまでもっていったことに感服したと振り返る。こういったことが自分たちでできなかったこと、そして日本製ではないタイトルであったところに悔しさを感じていると語った。

ユーザーがソフトに対して対価を払う構造を崩さない

 宮本氏は、プラットフォームメーカーとビジネス運営者、そしてアプリやゲームを作る側との関係が徐々に変化していると切り出した。任天堂はプラットフォームホルダーとしてゲーム事業を展開するなかでは、他社との競争のなかではシェアを広げるために特定のソフトを独占するといった施策も行っているが、それはあくまでもソフトビジネスを成長させていくための過程であり、その根底にある考え方として、かつて代表取締役社長を務めた故・山内溥氏の「お客さんはハードを買いたくない。ゲームを遊びたいから仕方なくハードを買う」という言葉であり、宮本氏も「これが真理だと思う」という。

 最近では、キャリアが契約を増やすためにアプリを用意したり、サブスクリプションやオンデマンドサービスのユーザーを拡大したいために、ソフトやアプリを利用したりするケースも増えてきていると指摘。「ゲーム開発者は、それらとうまく付き合って行く必要がある。こうした企業がソフトウェアの価値を本当に大事にしてくれているのかを見きわめていかなければならない。ソフトの価値を高めて消費者が対価を払うという習慣を作ってくれる人たちと一緒に仕事がしたい」(宮本氏)と語った。実際に、かつて海外で「5本のソフトを付けてハードを売りたい」という提案が出てきたときに強く反対したことを事例に挙げ、ユーザーがソフトに対して対価を払う構造を崩さないように注意していきたいとした。

無茶ぶりや酷評がゲーム作りのエネルギー、ポジティブにするのが“笑い”

 ゲーム作りにおけるエネルギーやアイデアについても語られた。宮本氏が過去を振り返るなかで、ゲーム開発のエネルギーになっていたのは、誰かの無茶振りやモニターの酷評といったものだったと語り始めた。Wiiは「DVDケース2個分の大きさに収める」という無茶振りがあり、おおむねそのサイズに収まった。また、面白くないと指摘された開発中のゲームが、その後考えたアイデアによって面白くなったものもあったという。

 宮本氏は、こうしたことがなかったらアイデアが出なかったり挑戦もしなかったと話し、「むしろ感謝すべきことなのかもしれない」とした。そして、無茶ぶりや酷評を自分がどう受け流し、ポジティブなエネルギーに変えていくかが大事だとした。その秘訣として出したのが「笑うこと」。会議のような堅苦しく緊迫した場でも、宮本氏が率先して笑い、場をほぐしてポジティブな方向に持っていくように心がけているという。

 「アイデアはどこで浮かぶのですか?」という質問をよくされるという宮本氏。これについては、「誰でもアイデアは考えていて、それを良いアイデアだと思うか、いまいちでボツにするかというだけのこと」という。またいいアイデアでも「その時代には作れない」「ここには合わない」という、使えない理由もある。ここをラベル付けするぐらいに明確にして、自分の引き出しに入れておくのが重要だとした。

 こうしたアイデアはリラックスしているときに出てくるものとし、笑ったりリラックスする時間を作るのがいいとしたが、引き出しに何もない状態だとただリラックスするだけで終わってしまうため、普段から自分の中の引き出しを満たしておくことが大事だとした。

 講演の最後には、NHKの連続テレビ小説について触れた。宮本氏は「毎回出来不出来があるので、定点観測的に観ると面白い」との理由から、ここ10年程チェックしているという。特に4月から放送している「半分、青い。」については、主人公の少女が漫画家を目指す内容で、宮本氏もかつて漫画家に憧れていたことから、興味を持って視聴しているという。

 作中では主人公の少女が師匠に弟子入りするが、何度もダメ出しされて、夜眠れないほど悩んだり追い込まれていく光景があり、それを見て「ゲームを作るときに、自分は果たしてそこまで追い込んているのか」と自問したと振り返る。そして「あそこまで自分を追い込んで、そこまでのクリエイティブをやる人が、この中からひとりでも出たら、日本も世界に対して一矢報いることができると思うので、お互いに10年後に向かって頑張ろう」と呼びかけた。

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