テック系ベンチャーの聖地は本郷--ディープコア、AI特化型インキュベーション施設開設

 若手AI技術者や研究者が集うコミュニティスペースが東京・本郷に誕生した。AI特化型インキュベーターであるディープコアは、インキュベーション施設「KERNEL HONGO」を8月8日、正式にオープンした。

ラウンジスペース。右奥にあるのはパントリー
ラウンジスペース。右奥にあるのはパントリー
ホットデスク。各部屋には恒星の名前がついている。こちらは「Deneb(デネブ)」
ホットデスク。各部屋には恒星の名前がついている。こちらは「Deneb(デネブ)」

 ディープコアは、ソフトバンクグループが100%出資する子会社。1月にインキュベーション事業を開始した。AI分野、特にディープラーニング領域に特化していることが特徴で、現在、公募した約100名の「KERNELメンバー」に対し、創業を支援している。

 KERNEL HONGOでは、NVIDIAとの協業により、AIコンピューティングプラットフォームなどの計算資源を備えるほか、ミーティングルーム、ラウンジ、プロジェクトルームなどを完備。研究にフォーカスができるプライベート空間を用意する一方で、ラウンジやパントリーといった、ほかの会社や出入りする人々とコミュニケーションを生み出すスペースも確保する。

 空間デザインと監修は、シェアオフィスを手がけるWeWorkが全面的に協力しており、WeWorkが持つオフィスデザインやテクノロジなどを企業向けに提供する「Powered by We」の第1号案件にもなっている。室内にはセンサなどを設置し、人の流れをデータとして捉えることで、働きやすい空間づくりを実現しているという。

4階のオフィススペース。プロジェクトルームやプライベートオフィスなどが並ぶ
4階のオフィススペース。プロジェクトルームやプライベートオフィスなどが並ぶ
照明にはセンサを内蔵し、人がいないと消灯する
照明にはセンサを内蔵し、人がいないと消灯する

 KERNEL HONGOは、本郷三丁目駅から徒歩5分程度の場所に位置し、ビルの3〜4階の2フロアを使用。総面積は604.2平方メートルで、3階にラウンジやパントリー、4階にミーティングルームやプライベートオフィス、プロジェクトルームなどを備える。

 プライベートオフィスは、ディープコアが運営するベンチャーキャピタルファンドから出資を受けているスタートアップの一部が入居する予定だが、すべての投資先が入るわけではない。

 本郷を選んだ理由をディープコアCFOの雨宮かすみ氏は「テック系のスタートアップが多く、新しい集積地になりつつある。シリコンバレーなどもそうであるように、物理的集積地を持つことは、エコシステムの形成に重要なこと。企業や研究機関と連携しながら本郷をテック系の聖地として盛り上げたい」と説明。ディープコア 代表取締役社長の仁木勝雅氏も「感覚論だが、渋谷系スタートアップとは違う人材が本郷には集まっている。いわゆる『いくぞ!』という感じで起業してこなかった人たちに起業してもらいたいと思っている」と本郷という場所に対する思いを話す。

 ディープコアで技術顧問を務める東京大学特任准教授の松尾豊氏も「今回支援するのはAI、ディープラーニングなので、数学的な知識が必要。BtoC向けのビジネスセンスは実はそれほど必要ではない。あえていうと真面目な理系学生向き(笑)。日本の優秀な理系人材がようやく生きる時期がきたと思う。本郷のような伝統的な街と新たなテクノロジの融合は、意味あることだと思う」とコメントした。

 実証実験ができる場としても重視しており、企業や研究機関などとの共同実証実験にも積極的に取り組む予定。プロジェクトルームには、外から中の様子がわからないようにボタンひとつで、壁面のガラスが遮光フィルムによって外から覗けなくする装置も整える。

プロジェクトルーム「Jabbah(ジャバハー)」。左が遮光フィルムなし、右が遮光フィルムあり。実証実験などの機密を守れるように、ボタン1つで切り替えられる
プロジェクトルーム「Jabbah(ジャバハー)」。左が遮光フィルムなし、右が遮光フィルムあり。実証実験などの機密を守れるように、ボタン1つで切り替えられる

 今後は、イベントやAI分野の専門家を招いた勉強会なども実施していく予定。社会にインパクトを与えるイノベーションを起こす人材をKERNEL HONGOから輩出する考えだ。インキュベーション施設はこれからも増やして行きたいとしている。

KERNEL HONGOのエントランス
KERNEL HONGOのエントランス
ミーティングルーム「Betelgeuse(ベテルギルス)」
ミーティングルーム「Betelgeuse(ベテルギルス)」

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