米Amazon.comのデバイス事業責任者であるデイブ・リンプ氏が来日した。年に1〜2回ほど来日しており、日本チームやパートナー、ユーザーの意見を持ち帰り、本社のR&Dチームに共有しているという。8月1日に開かれた報道陣向けのラウンドテーブルでは、記者からのざっくばらんな質問に同氏が答えた。その中から特に興味深いトピックをいくつかご紹介する。
これまで、電子書籍端末「Kindle」(読む)や、テレビに挿し込むだけで映像が見られる「Fire TV Stick」(観る)、音声AI「Alexa」を搭載したスマートスピーカ「Amazon Echo」(聴く)などを販売してきたAmazon。次に狙う領域はどこかという質問に対して、リンプ氏が挙げたのが「カメラ」(見る)だ。
同社は米国時間4月12日、スマートドアホンや屋外セキュリティカメラを手がける新興企業Ringを買収した。金額は1000億円以上と見られる。Ringが提供するスマートドアベルシステム「Video Doorbell」をスマートフォンやタブレットと接続しておくことで、玄関のドアの外に誰かが来ると通知が届き、ユーザーはアプリを通じて訪問者と直接対面せずに話ができる。外出先でも、モーションセンサの通知とライブストリーミング機能により、いつでも訪問者を確認できるという。
リンプ氏は、「顧客のセキュリティの意識が高まっており、地域社会をいかに安全にできるかは重要だ。玄関でもカメラで確認してからドアを開けられる方がいいし、家の隅々にカメラがあれば安心して住めるだろう」と語り、同社としてもカメラ領域に注力していくと説明。また、Amazonが届けた荷物の盗難防止にもつなげられるのではないかと期待を寄せた。日本での販売は未定だが、グローバル展開をしていく予定だという。
同社がグローバルで販売しているスマートスピーカのAmazon Echo。米国で特に人気の機能は「音楽」と「スマートホーム関連」だという。どちらも従来のスマートフォンでの操作を声に代替することで、各機能の呼び出しを容易にした。リンプ氏によれば、Alexaのスマートホーム関連の開発者は1万人におよぶという。
日本のEchoユーザーにも音楽が人気なため、「dヒッツ」をはじめ対応する音楽サービスをAPI連携によって増やしているとリンプ氏。ジャズやクラシック、子守唄や子ども向けの音楽など、”ながら聴き”をするスマートスピーカならではの音楽がよく聴かれていることも特徴だとした。相撲の試合結果や星占い、交通情報など日本人だからこそ求める情報なども充実させているという。
Alexaの人格は、国ごとにローカライズしているとリンプ氏は話す。「Alexaは単なるマシーンの枠組みには収まらない。つまり人格を持った存在になりうるということだ。話していて楽しい、興味深いと思ってもらえるように学習している」。機械学習で補える範囲については世界共通のものを提供し、その国ならではの言葉や言い回しについては、各国のチームが手を加えているという。「ぜひ、Alexaにお気に入りのビールを聞いてみてほしい」(リンプ氏)。
Amazonのデバイスは、タブレット端末をはじめとして低価格で販売されることが多い。この点については、「価格はほぼ製造コスト」とリンプ氏は明かす。そのため、デバイスを販売するだけでは利益は発生せず、デバイスを通じて同社のさまざまなサービスが利用されて初めて利益が生まれるのだという。「常にデバイスをよりよいものにしようという心理が働くビジネスモデルだ」(リンプ氏)。
同社の製品作りでは、まずユーザーにとって魅力的な機能を考え、実現するにはどのようなデバイスが望ましいかを議論した上で、製造コストを決めているという。中には失敗や撤退したデバイスもあるが、そこから得られた最も重要な教訓は、リスクも承知で新たなプロダクトを世に出し続けることだとリンプ氏は強調した。「この“実験”はうまくいくと願いながら、顧客のために常に新しいものを生み出そうと考えるべきだ」(同氏)。
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