日本初の有人宇宙飛行、気軽に宇宙に行ける未来を目指す--「SPACE WALKER」始動

 日本初の有人宇宙飛行を目指すベンチャー企業、SPACE WALKERは8月1日、プロジェクト発足記者発表会を開催した。

 誰もが気軽に宇宙を旅する未来を目指すSPACE WALKER。取締役にはアートディレクターで代表取締役CEOの大山よしたか氏のほか、九州工業大学教授や元日本ロケット協会会長など、幅広い世代の重鎮や若手が名を連ねている。また、同社が開発を目指すスペースプレーンの開発には、IHIや川崎重工業、九州工業大学や宇宙航空研究開発機構(JAXA)が支援や共同開発、連携を共に進める技術アライアンスとして関わる。大山氏は、「世代を超えた組織体制で事業を展開し、日本の技術を集めてスペースプレーンを研究開発する」と語った。

大山氏(左から4番目)ら、SPACE WALKERの取締役メンバー
大山氏(左から4番目)ら、SPACE WALKERの取締役メンバー

 SPACE WALKERが開発を目指すスペースプレーンは、乗客6人、パイロット2人の8人乗り。IHIが開発中のLNGエンジンを3機搭載する。ロケット型ではなく、飛行機の延長で設計する有翼型の機体であることが特徴で、大山氏はこれにより安全性を担保できると考えているという。

SPACE WALKERが開発を目指すスペースプレーンのイメージ
SPACE WALKERが開発を目指すスペースプレーンのイメージ

 飛行時は、通常の飛行機と同様に滑走路から離陸する。3分以内に宇宙空間との境界と言われる100キロに到達し、最高高度である120キロには約4分で到達するという。コースは弾道飛行で、乗客は3~4分程度の無重量体験ができるとする。

 有人飛行実現のためには、着実なステップを踏む必要がある。SPACE WALKERでは、有人飛行に先立ち、無人のサブオービタルプレーンの飛行を目指すとした。科学実験や小型衛星の投入にしようできるサブオービタルを段階的に開発することで、有人飛行への技術蓄積や、法制度の整備を待つ考えだ。

有人型のほか、科学実験や衛星投入用の無人型も開発する
有人型のほか、科学実験や衛星投入用の無人型も開発する

 また、衛星投入ビジネスへの期待も見込まれる。海外で開発が進む小型ロケットでは、使い捨てとなってしまうためにコストがかさむ。一方で、SPACE WALKERの機体は有翼型のため、大気圏内を飛行して帰還し、再利用することが可能だ。

 今後の開発目標としては、まず2021年に科学実験用に使用する9.5メートルのサブオービタルを飛行させる。2023年には小型衛星打ち上げ用の14メートルのサブオービタルを、そして2027年には15.9メートルの有人スペースプレーンを飛行させる計画だ。研究開発は九州工業大学と共同で実施する。九州工業大学は2013年から2018年にかけて1.7メートルの実証機を複数回飛行させた実績があり、2020年には4.6メートルの実証機「WIRES」15号機を飛行させるという。

WIRESシリーズの14号機。実際に実験で飛行した機体だという
WIRESシリーズの14号機。実際に実験で飛行した機体だという

 「誰かが日本で有人飛行を実現しないといけない」と語った大山氏。日本では1980年代以降、当時の宇宙開発事業団(NASDA)による宇宙往還機「HOPE」などの開発が進められてきたが、いまだに実用化まで至ったケースはない。しかし、九州工業大学の教授で、SPACE WALKERのファウンダーを務める米本浩一氏は、実用機を開発するための技術はこの30年間で蓄積されてきたとする。米本氏は、「日本もアメリカやロシア、中国と同様、有人による宇宙飛行を実現する必要がある」と夢を語った。

 宇宙開発事業には、多額の資金が必要となる。代表取締役COOの眞鍋顕秀氏によると、2021年のサブオービタル開発までに100億円、2027年の有人機実用化までには500億円から1000億円もの費用が見込まれるという。ベンチャー企業としては高い金額だが、眞鍋氏は「ベンチャー企業ではなく、宇宙と地球を繋げるインフラ企業だ」とアピールし、資金調達を進めていくとした。

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