シャープは、2019年3月期第1四半期連結業績を発表した。売上高は前年同期比5.4%増の5338億円、営業利益は45.0%増の248億円、経常利益は23.9%増の212億円、当期純利益は32.6%増の192億円となった。
シャープの代表取締役兼副社長執行役員の野村勝明氏は、「売上高は、2016年度第4四半期以降、6四半期連続で前年同期を上回り、各利益とも大幅に伸長した。とくに、営業利益は、前年同期比で1.5倍に迫る大幅な増益になった。販売が順調だったことに加え、継続的なコストダウンに取り組んだ成果がでている。公表値に対する進捗よりは、若干上回っている。戴正呉会長兼社長が打ち出している『質への転換』が実現できている。中期経営計画の達成に向け、引き続き順調に推移している」と総括した。
なお、2019年3月期第1四半期末のたな卸資産は、2017年度末の2197億円から、2520億円へと拡大。月商比では1.09カ月から、1.42カ月に増加しているが、「これは、垂直統合型ビジネスの強化に向け、一部の関係会社を連結子会社化したこと、第2四半期以降の新商品販売に備え、商材を確保したことによるもの」と説明した。
セグメント別では、スマートホームの売上高が前年同期比15.6%増の1505億円、営業利益は前年同期比19.9%増の118億円。「『AQUOS R』シリーズや『AQUOS sense』などの携帯電話が伸長。また、コードレス掃除機の『RACTIVE Air』などの掃除機が前年同期を大きく上回った。さらに、エアコンや洗濯機、冷蔵庫なども好調だった」という。スマートフォンの売上高が前年同期比で約4割伸長、白物家電が約1割伸長しているという。
また、「白物家電はASEAN、中国を中心に、カテゴリ、ラインアップ、顧客、販路の拡大を進めていく。インドネシアではハラル認証を受けた特徴ある商品も投入している。液晶テレビでは、今後、再参入する市場(北米)への展開も進めたい」と語った。
猛暑の影響については、「第1四半期は、国内のエアコンは約3%の成長になっている。第2四半期ではさらに成長することになる」(シャープ 執行役員 管理統轄本部 管理本部長の榊原聡氏)という。
スマートビジネスソリューションの売上高は前年同期比8.9%増の786億円、営業利益は前年同期比20.7%増の36億円。海外の複合機などが好調だったという。
IoTエレクトロデバイスは、売上高が前年同期比33.6%増の1112億円、営業利益が前年同期比43.5%減の9億円。スマートフォン向けカメラモジュールやセンサモジュールのほか、半導体など独自デバイスが伸長したが、成長投資に伴う償却費の増加により減益になった。前年同期にはなかったセンサモジュールが加わったことも増収に貢献した。「2017年度第4四半期と同等規模の売上高だが、同四半期は赤字だった。2017年度に投資した償却が増えていながらも黒字になったのは、コストダウン効果によるもの」と述べた。
アドバンスディスプレイシステムは、売上高が前年同期比15.4%減の2111億円、営業利益は前年同期比55.6%増の105億円。「流通在庫を勘案し、中国で液晶テレビの販売を抑制したことが減収に影響した。だが、液晶テレビ事業は、欧州やアジアなどが伸長し、販売を抑制した中国向けを除いた売上げは増加している。液晶テレビは、1000万台の出荷規模は維持しつつ、質(利益)を追い求める。販売が減少しても、大きく赤字にならないオペレーションができている」とした。中国の液晶テレビは、売上げが減少したものの、黒字は継続しているという。また、ディスプレイ事業は、中国向けスマートフォン用パネルの販売が減少し、大型パネルが価格下落の影響を受けたという。しかし、大手顧客向けスマートフォン用パネル、PCおよびタブレット向け、車載向け中型パネルが好調で、売上は横ばいになったという。大幅な増益要因は、コストダウンやルートミックスの改善などが寄与しているためと説明した。中型パネルの構成比が上昇しているという。
「ディスプレイは、IGZOやフリーフォームディスプレイなどの豊富な技術リソースを活用して、PCおよびタブレット向け、車載向け、アミューズメントにも展開したい」と語った。
有機ELパネルについては、「2018年6月から、オンスケジュールで生産を開始している。第3四半期には当社製スマホに搭載することになる」とした。
なお、4月26日に公表した2018年度通期の業績予想には変更がなく、売上高は前年比19.1%増の2兆8900億円、営業利益は22.1%増の1100億円、経常利益は12.0%増の1000億円、当期純利益は13.9%増の800億円を見込んでいる。
「これまでの流れを止めることなく事業拡大を進めるとともに、収益力の強化と財務体質の改善を図る」とした。
また、自己資本比率が20.9%となり、2011年度末以来、6年3カ月ぶりに20%を上回ったことにも触れながら、資本政策についても説明。「利益の積み上げが進んでいることから、自己資本は着実に増加している。こうした状況において、資本の質的向上という観点から、不確実性や優先配当を有するA種種類株式を、速やかに取得・消却する意義は大きいと考えている」とし、「当初は公募増資による取得を想定していたが、株式市場の不安定度が増したため、ステークホルダーの利益の最大化に資するものにならないと判断し、これを中止した。一方で、現預金には余裕があり、各利益とも前年同期を大きく上回るなど、業績も順調に進捗していることから、手元資金を活用し、公募時と同条件で、早期にA種種類株式を取得すべく、みずほ銀行・三菱UFJ銀行と協議を進めている」とした。
一方、会見では、同社の事業ビジョン「8KとAIoTで世界を変える」への取り組みについても説明した。
「人に寄り添うIoT」では、AIoT機器のラインアップを幅広く拡充。9カテゴリ104機種の製品をそろえたことに言及。とくに、「COCORO MUSIC」、「COCORO GAME」、「COCORO PET」、「ヘルシオデリ」などのAIoTサービスを立ち上げていることを強調した。「これらを通じて構築したAIoTプラットフォームを他社に提供し、新たなビジネスの創出にも取り組んでいるほか、AIoT化によるアフターサービスの効率化も進めていく」とした。さらに、スマートオフィスやスマートサイネージ、スマートリテール、スマートファクトリーなどのAIoTを活用したビジネスの変革も進めることも示した。
「8Kエコシステム」では、AQUOS 8Kや業務用8Kカムコーダをはじめとして、8Kの応用製品を拡充。海外においても、展開地域を拡大していく計画を示した。野村副社長は、「8K製品や8K関連技術を核に、5GやAIの技術を組み合わせることで、放送分野のみならず、医療、セキュリティ、工業、教育、美術、インフラ保全、エンターテインメント、観光など、幅広い分野での事業展開が期待できる。各応用分野において、各パートナーと連携し、8K技術を活用したソリューションの展開を進め、8Kエコシステムの取り組みを加速する」と述べた。
会見前後には、エアコン、冷蔵庫、ヘルシオ、テレビ、ペットケアモニターなどのAIoT関連機器およびサービス、8Kテレビや8Kカムコーダ、8Kコンテンツなどの8Kエコシステムが展示され、シャープ 専務執行役員 スマートホームグループ長兼IoT HE事業本部長の長谷川祥典氏と、シャープ 執行役員 8Kエコシステム戦略推進室長の西山博一氏が説明を行うという場も設けられた。
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