パナソニックは7月20日、「モノづくりビジョン」として、生産技術本部の生産体制の現状や最新事情について技術セミナーを実施した。大量生産が主だった従来のモノづくりから、リードタイムを短くし、顧客対話しながら商品を試作、テストを重ねていくモノづくりへと変化しつつあるという。
モノづくりを担う生産技術本部は、中央研究所機械部門として1953年に発足。1977年に生産技術本部となり、2017年にイノベーション推進部門に3つあるうちの1つとなった。
製造は国内126、海外199の合計325拠点で手がけ、大量生産から少量生産、大物から小型デバイス商品、受注案件物から即納商品と、多種多様な要望に応えるモノづくりを実践しているという。
パナソニック執行役員 生産革新担当 兼 生産技術本部長、品質・環境担当の小川立夫氏は「卓越した生産技術力により、モノづくりのイノベーションをリードして事業部の経営に貢献すること」と、生産技術本部のミッションを話す。
現在進めるのは、構想時から顧客と一緒に商品を作っていく「アジャイル型の開発」だ。小川氏は「大量生産品をリーズナブルに製造するウォーターフォール(バケツリレー)型の開発は、構想から作り上げるまでの間に時間がかかる。あらゆるモノ同士がつながる今の時代では、商品ができるまでにお客様の価値の考え方が変わる可能性がある。早く価値を実感してもらうためにはアジャイル型の開発でムーブメントを起こさないといけない」と説明する。
小川氏は「パナソニックは大量生産が得意で、小さい単位で早く動かすことはあまり得意ではない。しかしここにチャレンジすることで、価値を高め、最速で求めているものを提供できるというモノづくりの位置づけを変えていく」と意気込む。
目指す方向性は「タテパナ」「ヨコパナ」による強みをいかした展開だ。タテパナとは事業部制を指し、ヨコパナとは、事業部にとらわれず、商品やサービスを生み出す新たなパナソニックのあり方を示す。
小川氏は「現在のパナソニックにおける活動は、ほとんどがタテパナによるもの。事業部制により、開発、製造、販売を最適に合わせこんでいる。だが、この状況だと担当範囲外の取り組みに手を出さなくなってしまう。パナソニックは数多くの技術があり、それらの技術を掛け合わせて生み出される商品やサービスは数多くあると思われる。事実、お客様からそういったご提案をいただくことも多い。各事業部が持つ技術や専門性を効果的にかけ合わせられるのがヨコパナの仕組みになる」と今後について説明した。
モノづくりのスピードについてもよりシビアに捉え、4月に「ラピッドマニュファクチャリング推進室」を設立。高精度スキャンや加飾印刷、3D造形などを組み合わせることで、より速く商品を開発する環境を整える。中でも金型製作は、3Dプリンタを用いることで、リードタイムを大幅に縮小。従来1カ月かかっていた金型製作が1週間でできるようになるなど、ビジネスモデルの検証を進めている。
小川氏は実際にラピッドマニュファクチャリングの事例として、住宅内のユーザーインターフェースに革新を起こすものとして開発している「HomeX」の基本センサキットを紹介。「2017年12月までデザイナーが紙で作っていたプロトタイプを、3カ月弱で基本センサーキットとして登場させた。社内デベロッパー向けに100台を配布している。HomeXは米国のシリコンバレーに開発拠点を置いているが、生産技術本部のスタッフを2名常駐させ、モノづくりのノウハウを提供しながら試作をしている」と取り組み内容を話した。
一方で新たな素材の採用にも取り組んでいる。7月に発表したコードレススティック掃除機「POWER CORDLESS」は、本体に「セルロースファイバー樹脂」を使用。これは、植物由来の新軽量素材で、国内家電で初めて構造部材として採用したもの。環境省の委託業務で開発したセルロースナノファイバー製品製造技術を活用しており、従来の樹脂と同じ強度で約10%の軽量化を実現しているという。
有効資源の活用とともに、エネルギーの削減にも積極的だ。「より良い暮らしと持続可能な地球環境の両立に向け、使うエネルギーより、創るエネルギーを多くする。創エネ、蓄エネ、省エネ、再エネの調達をトータルに進めながら、CO2ゼロの工場づくりを推進していく」と、今後を見据える。
小川氏は「モノづくりを強みをかけあわせ、お客様と社会の課題を解決していくのがパナソニックのモノづくりビジョン。こだわりを持って、次の100年もモノづくりの会社としての発展を目指す」と締めた。
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