パナソニックオートモーティブ&インダストリアルシステムズ社は、視認性の悪い夜間でも、250m先の物体が検知できる「TOF(Time of Flight)方式長距離画像センサ」の技術説明会を開催した。真っ暗な状態でも距離が測れることで、車載用のセンシングカメラや産業用カメラに活用できるとしている。
TOF方式長距離画像センサは、1光子から1電子を生成する通常のフォトダイオードに比べ、1光子から最終的に1万倍以上の電子を生成する、アバランシェフォトダイオード(APD)画素を使った新センサ。パナソニックでは、6月19日に開発発表をしている。
遠方にある人やモノ、小さなものなど、従来のセンサ技術では見られなかった、暗闇での視認性に優れ、高感度化、高解像度化、近傍から遠方を画像で距離計測できることが特徴。弱い光でも、光電子を倍増することで、画像情報を取得可能だ。
光電子を倍増すると、単純に画素面積が大きくなってしまうが、新センサでは、倍増部と蓄積部を縦積み構造にすることで、画素面積の極小化を実現。パナソニック オートモーティブ&インダストリアルシステムズ社技術本部 センシングソリューション開発センター課長の香山信三氏は「光電子を蓄積する蓄積部と増倍部、光電子を変換する光電変換部を縦に積むことで画素サイズを非常に小さくできる。通常のデジタルカメラで使われる画素サイズながら、非常に高感度にでき、サイズと高感度の両立に成功した」と、実用化しやすいことをアピールした。
距離計測においては、短いパルス光がモノに当たって戻ってくるまでの時間(Time of Flight:TOF)を使って計測。近距離は強い光が戻ってくるが、遠方は弱い光しか戻らないため、従来は計測がむずかしかった。新センサでは、APDで信号を倍増し検出できるため、弱い光でも計測ができ、近傍から遠方までの一括計測を実現したという。
遠方にある物体の画像化については、弱い光でも出力信号を画素内で積算し、確実に検出。一度の出力信号ではドット絵のように表現しかできなかったものも、10回積算することで鮮明化し、人やモノなど認識できるようになるという。
距離を測るデバイスとして、安価なソナーを始め、最近ではミリ波やLiDAR(ライダー)などが登場している。香山氏は「これらのデバイスは、存在まではわかっても解像度が限られているため、小さいなものなどが見えづらい。新センサは、小さなものまで確認でき、高解像度でありながら遠くまで見えるものとして開発した」と、コンセプトを話す。
今後は、2019年度をメドにサンプルの提供を検討し、2021年度までに法人向けに提案活動をしていくことを目標にしている。
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