モビリティデータを活用したサービスを提供するスマートドライブは8月6日、産業革新機構、ゴールドマン・サックス、モノフル(日本GLPの新規事業専門子会社)、2020(鴻海ベンチャー投資のパートナーファンド)から、総額17億円の資金を調達したと発表した。今後は物流に本腰を入れ、中国で研究開発も進める。
同社では、自家用車にデバイスを装着してアプリと連携させることでドライバーの運転を診断するサービス「DriveOn」や、法人向けのクラウド車両管理サービス「SmartDrive Fleet」を提供。また、安全運転することで独自ポイントがたまる月額定額コネクテッドカーサービス「SmartDrive Cars」を4月から提供している。
「当初はクルマのセンサからデータを集めて、保険料金や配車の最適化をするなどしてきた。今後はカメラなど他社のデバイスとも連携することで、より複合的に分析できるようになる。集まったデータをより深く分析し、それを物流や研究開発に生かしていきたい」とスマートドライブ代表取締役CEOの北川烈氏は今後の構想を語る。
今回調達した資金は、(1)物流業界への展開強化、(2)コンシューマー向け事業の拡大、(3)研究開発部門の開設の、大きく3つに充てるという。
まず、物流業界への展開強化については、引受先であるモノフルが物流業界向けにリーズナブルかつ大容量なスマートフォン・タブレットを提供し、スマートドライブのSmartDrive Fleetと併せて利用してもらうことで、同業界におけるテクノロジインフラの普及と課題解決に取り組む。
コンシューマ事業の拡大については、調達した資金の一部をSmartDrive Carsの継続的な開発やプロモーションに使用。また、10月に正式ローンチ予定(8月に先行予約開始)の高齢ドライバーの運転見守りサービス「SmartDrive Families」の開発やプロモーションに充てるという。「法人向けも個人向けもコア技術は一緒で、クルマに関するコストや安全運転などの課題も変わらない。個人向けサービスで培ったUIやフィードバックは法人サービスに生かせるし、逆もまた然り」(北川氏)。
新サービスのSmartDrive Familiesは、家族の運転をPCやスマートフォンでいつでも確認できるもので、現在地を把握できるほか、急操作の回数や外出経過時間など“運転の特徴”をデータで振り返られる。将来的には、企業や自治体と連携して、事故確率が高い高齢ドライバーについては、免許返納を求めるなどの活用も考えられるという。
研究開発部門の開設については、同社が収集するモビリティデータを幅広い分野・サービスに活用していくための研究開発を行う拠点「SmartDrive Lab(スマートドライブ・ラボ)」を、6月に中国の深圳に開設した。現地のスタートアップやエンジニアとの共同研究開発や、日系企業などとの協業も含め、世界最先端の技術・人材を取り入れた研究開発を図っていくとしている。
「現地に行くと実感するが、日本で細々とやっていてはダメで、コア技術をどんどんブラッシュアップしていかないとすぐに置いていかれるという危機感はある。日本など外部から中国に行って、このスピード感をギリギリキャッチアップできるのは今年(2018年)が最後かなと思っている」(北川氏)。SmartDrive Labの採用も強化する予定で、数学的な教養のある研究者や、事業をより大きく成長させたい人材を求めているという。
SmartDrive Labの直近の実績としては、経済産業省の「産業データ共有促進事業費補助金」の対象に採択されており、ダイナミックマップ基盤とともに、高精度3次元地図データを共有する事業効率的な地図メンテナンスや、自動走行・安全運転支援システムでの利活用を進めるという。また、今後は人工知能やブロックチェーン技術を活用した研究開発にも取り組むとしている。
「会社を立ち上げてから間もなく5年。ようやくいろいろなことができるプラットフォームになり、これまでで最も可能性が広がっている。ここからが勝負。われわれが“移動”をよりよくする一翼を担っていきたい」(北川氏)。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」