栄養面の利点も期待される。ビタミンC、B6、チアミン、および葉酸などの多くのビタミンやミネラルは、時間の経過と共に劣化する。サーモンジャーキーなどはおいしそうに聞こえるかもしれないが、新鮮な食料と同じ栄養価はない。宇宙で野菜を栽培できれば、栄養不足をある程度補えるかもしれない、というわけだ。
信じられないような話だが、さまざまなものや人体の機能再生を助ける手掛かりが、虫から得られるかもしれない。その虫とは、扁形動物のプラナリアである。プラナリアは、切断すると、切断された各断片が成長して新しい完全な個体になる。
今から3年前、米タフツ大学は、切断した個体を含む複数のプラナリアを宇宙に運び、何が起きるのか観察した。プラナリアを使ったこの実験の結果は、少々気味の悪いものだった。切断されたプラナリアの中から尻尾側に2つめの頭が生えた個体が発見されたからだ。
研究者らはまだその理由を特定できていないが、プラナリアの再生に関する新たな知見が将来、脊髄損傷や脳変性疾患、心不全の治療に役立つのではないか、と期待されている。さらに、そうしたことが理解できれば、自動的に損傷を検知して自己修復する技術につながるかもしれない、と考えられている。修復したくとも地球から2億2000万kmも離れた場所にいるという場合には、この技術が大いに役立つだろう。
NASAによると、1ポンド(約454g)の積み荷を軌道に打ち上げるのに、約1万ドル(約113万円)の費用がかかるという。そのため、積み荷を軽くする必要がある。
あるいは、単に必要なものを必要なときに作ればいい。
宇宙で使われる機器の製造を手掛けているMade In Spaceのバイスプレジデント、Matt Napoli氏は「何かが必要になったらその場で作るようにする。その場所は宇宙空間でも月でも火星でもいい」と言う。
映画「スター・ウォーズ」に登場する「デス・スター」の設計者なら、おそらくこの意見に賛同するはずだ。
この2年間、Made In Spaceの「Additive Manufacturing Facility」(付加製造装置:AMF)はISSで3Dプリンタ技術を提供してきた。製造は地上から制御される。
NASAや顧客らは、部品や道具、医療材料などを作るためのサービスとしてAMFを使用する。
カリフォルニア州マウンテンビューに拠点を置くMade In Spaceは、まず3Dプリンタを宇宙空間で機能させる必要があった。例えば、同社のエンジニアは、微小重力下では、原料を溶かす熱が、地球上のように空気中に分散するのではなく、押出機に集まることに気付いた。その熱を放散させる方法を見つけなければならず、微小重力が印刷層の接着を妨げないか、溶けた材料が発する蒸気をISSの空間で吸い込んでも安全なのか、ということも確認する必要があった。
これまでに、同社は工具から指の添え木(宇宙飛行士が壁に向かって浮遊する際に指を挟んだりすることがあるため)まで、さまざまなものを3Dプリンタで作っている。最初の3Dプリンタ用の部品も3Dプリントで作成した。
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