こんにちは。D2C China代表の近衛元博です。中国で顔認証決済を導入している店舗が話題と聞き、休暇を利用して見てきましたので、その様子をレポートしたいと思います。
日本でも、指紋認証や声紋認証、静脈認証といったさまざまな生体認証方式が日々導入されていますが、中国では最近「顔認証」を使ったサービスが特に注目を集めています。今回は2017年8月に南京、同年11月上海に1店舗ずつ実験店として顔認証決済を導入し話題となった中国の小売大手、蘇寧易購グループ(Suning : 日本でお馴染みのラオックスの親会社としても知られる)の無人店舗の一つに行ってみました。
この無人店に入るためには、まず事前に自分のスマートフォンに蘇寧金融(Suning Finance)のアプリをダウンロードし、顔認証と口座情報を登録する必要があります。
中国では、AliPayのログイン時にパスワードの代わりとして顔認証ログイン機能が用意されていたり、大手インターネットプロバイダの新規加入手続きでも、アプリでの顔認証と身分証明書の登録だけで審査手続きが進められたりと、顔認証サービスが様々なシーンで普及しているため、顔認証登録に対する消費者の抵抗感はほとんどありません。
まず驚いたのが、入店前に顔認証を求められることです。店舗の入口に入店ゲートが設置されており、来店客はみな入場時にこのゲートを通過しなければなりません。ゲートの真上に設置されたカメラに顔を向けると、顔認証で認識され、モニターに私の情報が表示されます(もちろん、個人情報保護のために名前の一部しか表示されません)。無事にゲートが開き、お店に入ることができました。
蘇寧易購は、もともと家電量販店のイメージが強かったのですが、この無人決済店はスポーツ用品を中心とした商品構成となっているようでした。
店内の商品には、すべてオレンジ色の電子タグがついています。来店客は、購入したい商品を手に持って出口に向かい、支払い感知エリアを抜けて、出口ゲート前のカメラに顔を向けると、モニターに私の情報と購入する商品の情報が表示されます。
決済は蘇寧金融(Suning Finance)アプリに設定した銀行口座から自動で支払われるので、レジでの煩わしい手続きは一切ありませんでした。これまで当たり前だった、現金やクレジットカード、電子マネーなどでの「支払う」という行為をしないままなので、少し違和感がありましたが、面倒な支払手続きから解放され、手ぶらで買い物ができたのでとても快適でした。ちなみに、何も購入しない人用のゲートもあるので、欲しいものがなければ買い物をしなくても出られますのでご安心を。
今回体験した顔認証決済導入による無人店舗は、私たちが慣れ親しんだ「店舗での購買体験」の常識を大きく覆すものでした。おそらく近い将来、日本でもこのような無人店舗でのスマートな購買体験をできる日がやってくるでしょう。
AliPayやWeChat Payなどの電子決済から無人コンビニエンスストア、無人スーパーマーケット、顔認証決済などに日々挑戦している中国企業と、それらを受け入れてきた消費者たちのマーケティングコミュニケーション事例を、我々も積極的に学んでいく必要があるのではないか。改めて、そう強く実感させられた休日となりました。
近衛元博
D2C China代表取締役
慶應義塾大学 経済学部卒業。2001年ウェブデザイナーとしてキャリアをスタート。ディーツー コミュニケーションズ(現D2C)入社後、2006年より株式会社電通に出向し、その後5年間、電通のデジタル・ビジネス局にてモバイル領域のプランニング並びにサイト制作を手がけ、多数の大型クライアントのキャンペーン設計に携わる。2011年8月、迪尓希(上海)広告有限公司(D2C China)設立に伴い、同社の総経理(CEO)に就任。中国において、デジタルを活用したキャンペーンを精力的に手掛ける。2016年、中国で最も権威と影響力のある「中国国際広告祭」の「中国広告長城賞- インタラクティブ・クリエイティブアワード」でグランプリを獲得。
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