パナソニックは7月13日、ミャンマー・ヤンゴン市のロッテホテルヤンゴンにおいて記者会見を開き、同社の創業100周年を機に展開している「無電化ソリューションプロジェクト」を、ミャンマーでも展開することを発表。無電化村であるベービンセンナ村に、太陽光独立電源パッケージの「パワーサプライステーション」と、LED照明付小型蓄電システム「エネループソーラーストレージ」で構成される「無電化ソリューション」を寄贈した。
会見には、パナソニック アジアパシフィック ミャンマー支店支店長の前田恒和氏やパナソニック CSR・社会文化部部長の福田里香氏、寄贈プロジェクトに関わったNPO法人れんげ国際ボランティア会(ARTIC)ヤンゴン事務所代表の平野喜幸氏のほか、駐ミャンマー大使の丸山市郎氏、JICAミャンマー事務所所長の唐澤雅幸氏なども参加し、村民への寄贈セレモニーも開催した。
前田氏は「パナソニックは、ミャンマーにおけるCSR活動に積極的に取り組んでおり、1万5000台以上のソーラーランタンをミャンマーに寄付してきた。今回の無電化ソリューションの寄贈は、創業100周年記念事業の新たなCSR活動であり、社会的課題を解決し、無電化地域で暮らす人たちの生活の質を高めることに役立つと考えている」などとコメントした。
「パナソニックは1964年に、ミャンマーのラングーンにラジオ工場を建設。電球や電池、炊飯器などを生産してきた経緯がある。工場はすでに撤退しているが、2013年に、ミャンマー支店を開設して、再参入し、2018年に5周年を迎えた。私は、再参入からずっとミャンマー支店を担当しているが、ミャンマー流のビジネスを徹底的に学び、パートナーとも緊密な関係を築き、その結果、現在では、冷蔵庫や洗濯機、電子レンジなどのいくつかの商品でナンバーワンの市場シェアを獲得している。現在、11カ所にサービスセンターがあり、2018年度中には3カ所のサービスセンターを増設し、さらに、安心して利用してもらえる環境をつくることになる。パナソニックは、A Better Life,A Better Worldの実現に向けて、地域のニーズを特定し、人々の生活を豊かにする製品を製造するとともに、国の産業促進に貢献していきたい」などと述べた。
福田氏は「パナソニックは、2013年から5年間に渡って、ソーラーランタンの10万台寄贈プロジェクトを推進し、多くのNGOやNPOの協力を得ながら、これまでに、30カ国に対して、10万2716台のソーラーランタンを寄贈してきた。だが、まだ11億人が、無電化地域で暮らしているのが現状である。新たな無電化ソリューションプロジェクトは、電気がないために、教育や医療の広がり、安全が確保できないという社会的課題の解決にもつながる。また、村の人たちを対象にした技術トレーニングを行い、パワーサプライステーションなどが継続的に維持できるようにするのも、このプロジェクトの特徴である。今年は、インドネシア、ミャンマー、ケニアの3カ国で、このプロジェクトを推進することになる。ミャンマーのベービンセンナ村への寄贈では、子供たちの教育環境を向上させたり、生活の質を高めたりすることができると期待している」と述べた。
寄贈した無電化ソリューションは、太陽光独立電源パッケージの「パワーサプライステーション」と、LED照明付小型蓄電システム「エネループソーラーストレージ」で構成される。
パワーサプライステーションは、HIT太陽電池パネル12枚を搭載し、最大2.88kWの発電容量を持つ。また、蓄電池には、長寿命サイクル用制御弁式鉛蓄電池 12v-60Ah仕様のものを24台搭載。最大蓄電容量は17.2kWとなる。
パワーサプライステーションは、ベービンセンナ ブランチ高校に設置。太陽光で発電した電気は、教室や職員室のほか、寮生の部屋に供給される。すでに6月1日から稼働している。
また、LED照明付小型蓄電システムであるエネループソーラーストレージは、出力15Wの太陽電池を利用して発電。これを、容量3100mAhの37Whニッケル水素電池に充電。付属した2つのLEDランプに供給し、照明として利用できる。このエネループソーラーストレージは、ミャンマーの市場の声を反映して開発したもので、5Wの直管形LEDランプは人が集まる場所で使用。1.5Wの電球形LEDランプは、仏壇に使用することを想定している。国民の約9割が仏教徒であり、供給された電気を仏壇に優先的に使いたいというニーズを捉えた設計にしている。
5Wの直管形LEDランプは強モードで約7時間、弱モードで約14時間使用でき、1.5Wの電球形LEDランプは約24時間の連続利用が可能だ。晴天時であれば、充電は約5時間で完了。雨季の時期の日照時間は短いが充電は可能だという。
パナソニックは、ベービンセンナ村には、エネループソーラーストレージを100台を寄贈。そのうち、10台をベービンセンナ ブランチ高校で利用。残りの90台は、村の各家庭で利用する。村には約400戸の世帯があるが、最初に利用した家庭は、3カ月の期間限定として、次の家庭に渡して使用。1年間でほぼすべての家庭に回るようにするという。
一方で、蓄電池は約5年で寿命が訪れるが、それを村が継続して利用するための交換費用として、約100万円を捻出する必要がある。
ベービンセンナ村では、エネループソーラーストレージの使用者から、1日100チャット(約8円)の電気料金を徴収。さらに、学校の寮で使用していたディーゼル発電のための油代金としてかかっていた月100米ドルが不要になるため、これを、蓄電池の交換修理費用として確保。また、乾季には、電気を使って保存しているアイスキャンディーを1本50チャット(約4円)で販売して収益を得る。これらによって、自前での維持につなげるという。
こうした維持活動については、パナソニック側からも提案しておりれ、「地域の社会的経済効果につながるといったメリットも提供したい」(福田氏)としている。
社会貢献活動を継続的に行っているパナソニックは、「共生社会の実現に向けた貧困の解消」をテーマに活動をするなかで、無電化地域に対する機器の提供だけでなく、自律した運用や、新たな経済活動の創出にまで踏み出す内容としている点が注目される。
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