ビジネス面に目を向けると、Amazon Goのような自動化は、人員の削減と処理能力の増加に寄与する可能性がある、とMcKee氏は言う。「さらに、顧客ロイヤルティーの向上に伴って、平均注文額が増える店舗も出てくるかもしれない」(McKee氏)
こうした店舗で働く従業員も自動化のおかげでレジ打ちから解放されるため、生産性の向上を実現できる可能性がある、とLawrie氏は指摘する。だが、レジなし店舗には自動化以上にもっと多くの意味がある。
Wang氏は、「この取り組みの狙いが、単に自動化してキオスクを開設することだと考えているのであれば、それは見当違いだ」と述べている。
それでは、この取り組みの趣旨は何なのだろうか。答えはデータ、それも大量のデータだ。
AIを使って小売りのプロセスを簡略化すれば、より高度なデータの収集が可能になり、企業は顧客のことをより深く理解できるようになる。例えば、顧客は何かを買うと決めたときにどこに立っていたのか、それまでどのような気分だったのか、外の天気はどうだったのかといったことだけでなく、顧客の心拍数なども企業は確認できるようになるかもしれない、とWang氏は話す。購入時の状況を理解する上で、この種のデータは極めて貴重になり得る。
センサが成熟し、オムニチャネルの小売業が拡大する中で、こうしたデータの収集は家庭内にも拡大するだろう、とWang氏は述べている。具体的には、顧客の行動を学習して自動で補充するサービスやサブスクリプションが登場し、顧客に製品を配送するようになるかもしれない。ただし、これら全てはAIによって運用されるため、顧客が利便性や価値、セキュリティ、ステータスと引き換えにどれだけプライバシーを犠牲にしてくれるかが鍵になるだろう、とWang氏は話す。
レジなしショッピングの分野に進出したいと考えている企業は、この体験がまだ成熟段階に達していないということに留意すべきだ、とMcKee氏は語る。
「参入を熱望する企業は、ビジネスを展開する前に、徹底的な概念実証とパイロットテストを実施すべきだ。小売業者も、顧客の声に耳を傾けて、人々がこのようなショッピング体験を受け入れる準備ができているかどうか、そして、いつその準備ができるのかを理解した方が賢明だろう」(McKee氏)
さらに、最高情報責任者(CIO)と最高情報セキュリティ責任者(CISO)もそうした技術革新に伴う新たなセキュリティ脅威に備えておくべきだ、とLawrie氏は指摘する。
「最も重要な要素は、顧客データが安全に保管され、顧客がブランドや小売業者に対して同意した厳格なGDPRの範囲内でのみ、そのデータが使用されるということを保証することだ。さらに、顔認識などの新しいテクノロジには、企業ネットワークの末端部分における強力なネットワーク機能やコンピューティング能力が必要になる」(Lawrie氏)
インフラストラクチャとセキュリティツールの準備が整い、テクノロジが成熟して、よりよいユーザー体験を提供できるようになれば、Amazon Goと同じモデルが多くの小売市場に広まるのは時間の問題である。それに抵抗する人も大勢いるだろうし、高級ブランドはこれまでと同じように人間味のある接客を提供していくかもしれない。だが、将来、世界中のほとんどの購入体験はレジなしになる日が来るかもしれない。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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