神経ガスのサリンは、これまで作られた化学兵器の中で、最も恐るべきものの1つである。この無臭のガスはわずか数分で、人を死に至らしめる。
テキサス大学オースティン校の研究者らは、サリンやVXなどの神経ガスを容易に検出、特定できる方法を考案した。ちなみにVXは2017年に、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長の異母兄である金正男(キム・ジョンナム)氏の暗殺事件で使用された疑いがあるガスだ。
研究者らが開発したシステムは、組み立てブロックの「LEGO」や「iPhone」など、意表をつく市販の製品を使用している。その中核にある化学センサーは、神経ガスに反応して、その種類と濃度を色と明るさで示すことができる。
センサーを開発したXiaolong Sun氏は、「(センサーの発する)異なるレベルの蛍光色を肉眼で識別するのは、残念ながら困難だ。また研究室で利用されていている装置は持ち運びできない上、3万ドルと高額だ」と説明する。
その解決策として考え出されたのが、スマートフォンでセンサーの結果を撮影して、分析するという方法だ。研究者らは、テキサス大学の大学院生であるAlexander Boulgakov氏が開発したソフトウェアを使用した。このソフトウェアはGitHubで無料で提供されており、その他のOS向けに適応させることができる。研究者らは今回、iPhoneを使用した。
「暗室」の役割を果たす箱を使えば、スマートフォンによるセンサーの読み取り精度を向上できる。研究者らは3Dプリンタで箱を作成することを考えたが、LEGOのパーツを使う方が安価であり、入手しやすいという結論に達した。この装置の残りの部分は、UVランプと試料の採取によく使われる標準的なプレートから成る。
研究者チームは、開発したこの装置に関する論文を米国時間6月27日に「ACS Central Science」ジャーナルに発表し、「実環境の現場で広範に応用できる」と締めくくっている。
化学教授のEric Anslyn氏は、「化学兵器は人類にとって危険な脅威だ。検出と中和が人命救助の鍵となる」と述べている。この装置にように、低コストで持ち運びできるシステムなら、緊急救援隊員はどういったガスに対処しているのか素早く突き止めて、適切な措置を講じ、被害者の手当てを行えるだろう。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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