LIFULLでは、新規事業案件を、SWITCHエントリー前の「Ideation」、「SWITCH」、「Pre-Seed」、「Seed」、「Early」と5つのステージに分けてサポート。SWITCHでは新規募集案件を集めるほか、相談会、ピッチイベント、入賞決めまでを担う。
募集案件を増やすために、エントリーの前段階にも力を入れ、特定の領域に特化した勉強会や、過去に事業を立ち上げた人たちとコミュニケーションがとれるランチ会などを実施。「SWITCHに触れる機会を増やすことで社内での認知度を高めている。さらにアイデアはあるけれど、この先どうしていいのか悩んでいる人向けに『ブレスト会』も企画。そこでは複数人でアイデアを考えるなどして、企画案を出しやすくしている」(今村氏)と、段階に応じた施策を用意する。
これらのコミュニケーション施策とは異なるもう1つの取り組みが「SWITCH WORKING GROUP」だ。これは全社員の中から有志で結成したワーキンググループで、現在10名強が在籍。イベント企画や運営サポートから、ピッチの司会進行などを担う。「SWITCHのような取り組みは、特定の部門だけがやっている施策に見えてしまう局面があり、全社員を対象としたイベントながら、全社に浸透しきらないことが課題の1つだった。それに身近な社員が関わることで、ワーキングメンバーがタッチポイントになって、周りの社員に波及させられる」と今村氏は狙いを話す。ワーキンググループのメンバーは、部門も職種も異なり、LIFULLグループ会社からも参加。「よりSWITCHの制度が理解・認知されるように幅広い部門や職種のメンバーが集まるようにしている」(今村氏)とワーキンググループメンバーの多様性の重要さを話す。
ワーキンググループのメンバーは、自ら率先してSWITCHに新規事業案を提出。中には、すでに進行中の案件を抱えながら、新規案を提案したり、ほかの社員のサポーターとして参加したりと、積極的な人もいるとのこと。ややもすると、新規案を出すメンバーが固定されてしまうような印象を持つ。その固定化を打破するのにもワーキンググループメンバーの力が必要だと今村氏は話す。
今村氏は「ワーキンググループ設置の狙いの1つは、事業提案メンバーの幅を広げること。LIFULLは新規の事業や案件に対して、社員の意識が高い会社ではあるが、毎年エントリーしてきてくれるのは、全体の約2割程度。残り8割が参加するようになるためには、SWITCHの内容を伝える人が必要になる。開始当初はワーキンググループのメンバーがエントリーするという結果にしかならなかったが、回を重ねる内に、同じ部門の人や同期など周りの人に声をかけてもらうことで、広がり始めていると感じる」と成果が出ていると明かした。
ランチ会やブレスト会などのイベントを実施することと、ワーキンググループを作って社内における新規事業取り組みへの文化を醸成する。この2つの施策を取り組むことで、新規事業案を出しやすく、育てやすい環境を構築している。
もう1つ、効果の出た施策として今村氏はチーム制の導入を挙げる。「新規事業案は基本的に1人で考えるケースが多いので、先に進めず壁にぶち当たることもある。そうするとどうしてもモチベーションは下がってしまう。この時に諦めず前に進むために必要なのが仲間の存在。チーム制を推奨し、複数人でアイデアを出しあったり、役割分担することで、前に進めるようにお互いがサポートしあえる。実際に事業オーナーとその想いに共感するメンバーをつなげることも始めた」という。
このほかにも、メンタル面をサポートするメンター制度や、事業案のブラッシュアップをサポートするアクセラレーター制など、誰かに相談できる環境を整える。「1人で考えると、どうしても視野が狭くなってしまうので、壁打ちできる相手がいることは大切。2~3人のチームでエントリーしている案件は、入賞後も含めて動きがいい」と明かした。
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