食べ物をモチベーションとする探知犬は、引退するまで、刷り込まれた化学物質の匂いを嗅いだ後でしか、餌を食べることができない。そのようにして、任務遂行のメンタリティを保つのだ。
ハーリーが餌をもらえるのは仕事中だけだ。電子機器を見つけるたびに、一握りの餌が与えられる。捜査がない場合、Hochron刑事は家の中に電子機器を隠すように友人に頼むなどして、捜索の機会を作り出す。彼の友人の中には、電池切れを起こしたiPhoneを、ハーリーに探してもらえないかと尋ねた者さえいるという(その家族はハーリーが実力を発揮できる前に、電話を見つけたとのこと)。
Halligan氏は、「訓練を開始した日から引退する日まで、ハーリーはフードボウルで食事をすることはない」と語る。
Hochron刑事の場合、身の周りに電子機器があふれているため、ほかのハンドラーより恵まれている。麻薬や爆発物の探知犬だと、餌を与える前にその匂いを嗅がせなければならないため、いつも手近に違法物を置いておかねばならない。
しかし、これらの犬も週に1回、探知しなくても餌をもらえる日がある。その日はサツマイモや卵など、褒美をもらうことができる。Hochron刑事によると、ハーリーのお気に入りは乾燥させた肉のパティだという。
ハーリーは仕事中、全く別の犬のようだ。
普段はゴロゴロするのが大好きなのんびり者のハーリーだが、TPPOらしき匂いを嗅ぐと、途端に興奮する。周りをクンクンと嗅ぎ回り、しっぽを振って、涎を流し始める。そわそわと歩き回った末に、Hochron刑事の方を向いて、ぺたりと座り込む。まるで彼に見つけて欲しい秘密があり、じっとしているのがもどかしい様子だ。彼が対象物を見つけると、一握りの餌がもらえる。
筆者が見学したデモで、ハーリーはこれまで一度も入ったことがなかった部屋で、10点の対象物を探知した。中にはカウチの下の携帯電話など、一目瞭然のものもあったが、そのほかのものは熟練した目が見逃しても無理のない、分かりにくい機器ばかりだった。コート掛けにしか見えないが、実は監視カメラだとHalligan氏が教えてくれたものさえ、ハーリーは嗅ぎ出した。
ハーリーはすべての機器を見つけて餌をもらい、嬉しそうだ。食事に満足して床に寝そべっているが、Hochron刑事に必要とされたら、すぐにでも仕事ができる準備が整っている。2017年夏に卒業して以来、本番の捜査に17回参加している。彼女は今でも、毎日トレーニングを欠かさない。
「捜査するときになれば、ガラリと違う表情を見せる。だがそれ以外の時は、ごらんの通り、茶目っ気たっぷりの犬だ」と、Hochron刑事は目を細めた。
本稿はCNET Magazine: Summer 2018 Editionに掲載されたものです。この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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