電子機器を嗅ぎ出す探知犬--サイバー犯罪の摘発で活躍 - (page 2)

Alfred Ng (CNET News) 翻訳校正: 編集部2018年06月27日 07時30分

犬が思わぬ方法で貢献

 犬は生まれつき嗅覚が優れている。

 人間がピザの匂いを嗅ぐ時を例にあげるなら、犬はクラストの小麦粉や、トッピングのトマト、オレガノ、バジル、モツァレラチーズまで嗅ぎ分けることができる。犬のトレーナーがオーストラリアの公共放送局Australian Broadcasting Corp.に語ったところによると、人間の嗅覚受容細胞すべてをバターナイフで塗り広げた場合、それはせいぜい切手ほどの大きさである。しかし、それが犬の細胞だと、ティータオル(英国などで使われる台布巾。キッチンクロス)ほどの大きさになるという。

 このため、コネチカット州警察コンピュータ犯罪部門の警視の1人が、犬はサムドライブを嗅ぎ分けることができるだろうかと、同警察のK-9アカデミー(米国で最も長い歴史を持つ警察犬訓練校)に尋ねたのも、驚くに当たらない。

 答えを探るために、コネチカット州法科学鑑定研究所の化学者であるJack Hubball氏は、複数メーカーからサムドライブ、SDカード、ハードディスクを取り寄せた。そして、すべての記憶装置には、トリフェニルホスフィンオキシド(TPPO)と呼ばれる化学物質が使用されていることを突き止めた。それこそまさに、彼らが必要としていた突破口だった。

 共通する化学物質を特定できたため、同州のK-9トレーナーは最初のESD犬の訓練を2012年に開始した。そしてセルマ(Selma)という名の黒色のラブラドールレトリーバーに、この化学物質の臭いを「刷り込む」ために6カ月間費やした。

 セルマに幾度となく、人間には無臭と思われる白い粉末を嗅がせ、その後で餌を与えた。そのうちセルマは、その匂いを食べ物と関連づけるようになり、褒美をもらうために、熱心に匂いを探し求めるようになった。また彼女は、調査官が完全に見逃していた機器まで、見つけることに成功した。Halligan氏によれば、途中で思いがけない問題が起こらないように、このプログラムは4年間秘密にされていたという。

 コネチカット州警察は2016年に、これまでの取り組みを発表し、最初の公的なクラスを同年春に開講した。卒業した5頭の犬は、FBIのほか、アラスカ州、マサチューセッツ州、ミズーリ州、バージニア州の警察に配備された。Hochron刑事は2018年2月時点で、国内に少なくとも17頭のESD犬がいると見積もっている。

犬の選抜

 Halligan氏がESD犬の候補を探す時、次の3つの要件をチェックする。

 「一番重要なのは、勇敢か、エネルギッシュか、そして食べ物が好きかどうかだ」と、同氏は語る。

 食べ物がモチベーションになることが、最も重要だという。これまでHalligan氏が訓練した犬が、すべてラブラドールであるのも、そうした理由からだ。この犬種は、同氏が訓練したほかのどの犬よりも食欲旺盛である。

 Hochron刑事はハーリーのことを、「彼女は食べ物に強い執着心があるため、今ドッグフードを1缶与えても、1時間後には仕事ができる」と説明した。

 Halligan氏がテストした犬はすべて、盲導犬向けに育成された犬だった。しかし盲導犬になるには、あまりにもエネルギッシュで、大胆すぎる性格の持ち主ばかりだった。

 また彼女が求めているのは、反抗するだけの気骨がある犬だ。Halligan氏は、キッチンカウンターから食べ物を取らないように訓練された100頭ほどの犬をテストする。彼女がその中で探すのは、習った規則を破ることができる犬だという。

 さらに食べ物の粒を、棚や使用中の洗濯機の上など、風変わりな場所に置き、犬が自発的に探そうとするかもチェックする。

提供:Sarah Tew/CNET
ニューヨーク州ウェストチェスター郡警察のBrett Hochron刑事と、相棒のハーリー
提供:Sarah Tew/CNET

 次にHalligan氏は、ほかの犬や遊びなど、犬の気を散らしそうな新しい要素を取り入れる。合格するのは、食べ物欲しさに彼女の元に留まる犬だ。およそ100頭のうち、ほんの一握りしか合格しない。

 ハーリーは、Halligan氏が訓練した9頭目のESD犬だ。

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