没入型の仮想現実(VR)は従来のプラットフォームよりも、学習や記憶維持に良い効果をもたらすのか。メリーランド大学が初めて、詳しい調査を行った。
調査の結果、「没入型の補助」があると人はデスクトップ画面よりも空間を認識しやすくなり、記憶を助ける空間認識能力が刺激されるという。詳しくはVirtual Realityに掲載されている。
コンピュータサイエンスを専門とする同大学のAmitabh Varshney教授は「没入型の環境が新しい道を開き、教育や高度なスキルのトレーニングの分野に良い結果をもたらす可能性がある。そのため、このデータに気持ちが高ぶっている」と大学のウェブサイトに掲載された記事で述べている。
調査では「メモリーパレス(記憶の宮殿)」と呼ばれる記憶法を使った記憶テストを行い、対象者たちを観察した。
メモリーパレスは、よく知っているビルの部屋などの場所を思い浮かべ、そこに記憶したい対象や絵を置いていく方法だ。人はこの記憶法で、より多くの量の情報を空間的に整理し、より簡単に思い出すことができる。
調査の中で、参加者は、著名人や大統領などのなじみのある人の顔写真が並んだ仮想のメモリーパレスの中を移動するよう指示された。その際、片方のグループはVRヘッドセットを使い、もう一方のグループにはデスクトップコンピュータとマウスが与えられた。
その後、一部の写真を空白に置き換えたところ、VRヘッドセットを使ったグループの方が、人物の顔の場所をよく思い出すことに成功した。
調査では、VRヘッドセットのグループはコンピュータを使ったグループに比べ、記憶の正確性が8.8%高まるという結果が出た。これは統計的に見て著しい数値だという。
論文の主執筆者で、コンピュータサイエンスを博士課程で専攻するEric Krokos氏は「洞窟に掘った絵、粘土板、紙の印刷、ビデオと、人はいつの時代も視覚をベースにした方法で情報を記憶してきた」「VRがこの進化の次なるステップなのかを調べたかった」と述べる。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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