コンピュータはこれまで、1997年にチェスで人間を打ち負かし、2011年に米国のクイズ番組「Jeopardy!」で人間を打ち負かし、2017年には囲碁で人間の世界チャンピオンたちを倒した。そして米国時間6月18日、コンピュータははるかに感覚的な戦いで人間にかろうじて勝利した。その戦いとは、ディベートだ。
IBMは、計算論的議論(computational argumentation)と呼ぶもので競うシステム「Project Debater」を開発した。計算論的議論では、主題を把握し、自らの立場を提示し、反対意見に対抗する。IBMは報道機関向けのイベントで、数々のディベートで勝利した実績を持つ2人の人間とシステムを競わせた。
第1のディベートにおいて、Noa Ovadia氏は、政府は宇宙探査に補助金を出すべきでないとする同氏の見解に、数十人の聴衆のうち2人を納得させるに至った。だが第2のディベートでは、Project DebaterがDan Zafrir氏を完全に打ち負かし、遠隔治療の利用を増やすべきだとする主張に9人の聴衆を引き寄せた。
同社はIBM ResearchのProject Debaterから利益を得ることを目指しているが、このプロジェクトが今すぐ商用に転用されたとしても、まだ人間が仕事を失うことにはならないだろう。Project Debaterは20分にわたる即席のスピーチの中で数回、その非人間的な性質をあらわにした。しかし、Project Debaterは確かに、人工知能(AI)が明確なルールやボードゲームまたはクイズ番組での勝利だけでなく、人間の相互作用における複雑さに対処できることを示した。
IBM ResearchでProject Debaterのディレクターを務めるRanit Aharonov氏は次のように述べた。「われわれの人生は黒か白かではない。あいまいで、主観的だ。AIはそうした領域に進んでいかなければならない」
Project Debaterは、ディベートの手法について事前に訓練を受けたが、ディベートそのものの詳細についてはディベートの開始直前に知らされた。主張を組み立てるため、自由に使える3億件のニュース記事や学術論文を収集し、素早く検索できるよう事前にインデックス化した。ただし、情報を見つけて、説得力のある形でまとめ、相手の主張を聞いて、反論を組み立てる必要があった。
同様に、主張とそれに対する反論という形式で独自のディベートプログラムを運営している団体、Intelligence Squared US(IQ2US)の最高執行責任者(COO)を務めるClea Conner Chang氏は、「この技術が3億件のソースから情報を引き出して、ディベートの中で会話のように聞こえる話術に集約するのを目にするのは驚くべきことだ」と述べた。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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