デマが広まる心理が分かる調査結果がある。12〜69歳男女を対象にしたLINE Research Platform × 博報堂共同研究プロジェクト『若者インサイトラボ』の「フェイクニュースに関する調査」(2017年7月)を見ていこう。
SNSやブログなどネット上のオープンな場でニセの情報やニュースを書き込んだりシェアしたりしたことがある割合は、10代が28%で最多。続いて20代(25%)、30代(23%)と若年齢層が多くシェアしている。しかも、この割合はTwitterのフォロワー数が多いほど高くなることがわかっている。
また、「『SNSでシェアしたい』と思った情報が本当に正しい情報なのかどうかよくわからないときにどうするか」という質問に対して、ニセ情報をシェアした経験のある人は、条件付きでシェアする人も含めて54%が「シェアする」と回答。「内容が正しいかどうか気にせずシェア」も15%いた。SNSでシェアしたいと思ったら、内容の真偽を確認せず気軽に投稿してしまう傾向にあるというわけだ。
実在の人物から発せられた情報のほうが信頼される傾向にあることを、「イグゼンプラー効果(exemplar:典型、代表例)」という。街頭インタビューが行われたり、商品に利用者の声が使われるのは、この効果を狙ったものだ。たとえ直接知らない人でも、実在の人物が発した言葉のほうが真実味が増して感じられる。まして知り合いの言葉は信じてしまいがちだ。
つまり、あるユーザーが真偽を確認しない情報をSNSで投稿したことをきっかけに、SNSの拡散力と心理的効果によってデマが拡散してしまうというわけだ。悪質なデマをでっち上げるのは、熊本地震の例を見ても分かるように被災者ではない外部の人間のことが多いが、拡散にはもっと多くの人たちが関わってしまっている。
今回の震災では、スマホやSNSを活用して乗り切ったり、周囲の人たちのために動いている高校生が多く、スマホネイティブの底力を感じた。一方で、心配や不安などから無防備にRTしてしまっている例も散見されたように思う。
SNSで情報取得する際は、元の情報をたどり、信頼性を確認することが大切だ。アカウントの信頼性や、前後のツイートなどからデマではないことを確認したり、検索してほかにも同様の情報があるか確認するといいだろう。
震災時は情報が錯綜し入手しづらい状態となるが、そのようなときには被災した土地の公式アカウントや公式サイトなどで正しい情報を確認するのがおすすめだ。今回も、「もずやん@大阪府広報担当副知事(@osakaprefPR)」などの大阪府公式アカウントが、デマの拡散に注意を促している。
まだ余震の可能性もあり、食糧・水・運動靴・モバイルバッテリ・家族との連絡手段などを確認しておくことが推奨されている。非常時などに正しい情報を入手する参考にしていただければ幸いだ。
高橋暁子
ITジャーナリスト。書籍、雑誌、Webメディア等の記事の執筆、企業等のコンサルタント、講演、セミナー等を手がける。SNS等のウェブサービスや、情報リテラシー教育について詳しい。
元小学校教員。
『スマホ×ソーシャルで儲かる会社に変わる本』『Facebook×Twitterで儲かる会社に変わる本』(共に日本実業出版社)他著書多数。
近著は『ソーシャルメディア中毒 つながりに溺れる人たち』(幻冬舎)。
ブログ:http://akiakatsuki.hatenablog.com/
Twitter:@akiakatsuki
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