シャープ「ASEAN No.1ブランドを目指す」--戴社長直轄指揮で拡大戦略

 シャープの代表取締役社長である戴正呉氏が、ASEAN各国を訪問し、政府高官や大手量販店首脳と会談。トップ会談を通じて、シャープの製品や各国における施策などを説明。存在感をアピールした。

 シャープは、2019年度を最終年度とする中期経営計画に取り組んでいるが、そのなかで、海外売上高比率を8割にまで拡大する目標を明らかにしている。わずか2年で海外売上比率を1割以上拡大する意欲的な計画であり、海外事業の拡大は、成長戦略の重要な柱になる。

 とくに、ASEAN地域での事業拡大は、戴社長が「シャープにとって、ASEAN市場が最も力を発揮できる市場。この地域を社長直轄指揮により、拡大戦略を推進する」と語っており、「ASEAN No.1ブランドを目指す」とする高い方針を掲げている。

 戴社長は、それに向けて、「ASEANおよび台湾では、毎月、途絶えることなく、社内の戦略討議や対外的なイベントを実施している」とし、2018年度に入ってからは、4月に、中国・深センで、「ASEANマーケティングセンター リージョナルコミュニケーションミーティング」を開催し、各事業責任者や各販売会社のマーケティング責任者が情報を交換するとともに、ASEANにおけるブランドイメージの統一や、宣伝販促活動のレベルアップについて議論を行ったほか、具体的な施策として、4月にはマレーシアで、5月にはインドネシアおよびフィリピンで、それぞれ新製品の発表会見や販売キャンペーンを開始するといった取り組みを行ってきた。

 今回の戴社長のASEAN各国の訪問は、ASEAN No.1ブランドの獲得に向けて陣頭指揮を執る同社長が、直接現地を訪問し、トップ会談を通じて、各国における存在感を高めることを狙ったといえる。

 訪問期間は、6月11〜16日までの6日間で、インドネシア、タイ、ベトナムの3カ国を訪問した。

 6月11日に、訪問したインドネシアでは、ジャカルタ市で、工業大臣のAirlangga Hartarto氏と会談。インドネシアのエレクトロニクス産業の競争力向上に向けて意見交換を行ったという。戴社長は会談のなかで、「シャープの8K技術は、島が多く、地震も多いインドネシアでの遠隔医療や、早期震源地の特定にも役立つ」と語ったほか、「インドネシアの製造、販売子会社のピー・ティー・シャープ・エレクトロニクス・インドネシア(SEID)は、5月に過去最高の売上げを達成した。今後もインドネシアの内需のみならず、輸出事業も確実に拡大していきたい」と述べた。

 インドネシアでは、同国初となるハラル認証を受けた冷蔵庫とフリーザーの新製品を、シャープが発表しており、これを、現地のSEIDで生産。インドネシア国民の大半を占めるイスラム教徒のニーズに対応したローカルフィット製品として、販売に弾みをつける考えだ。

インドネシア工業大臣Airlangga Hartarto氏(左)と、シャープの戴正呉社長(右)
インドネシア工業大臣Airlangga Hartarto氏(左)と、シャープの戴正呉社長(右)
左から4人目がインドネシア工業大臣Airlangga Hartarto氏、同5人目がシャープの戴正呉社長。指で「4」を示したのは、Industry 4.0の意味がある。
左から4人目がインドネシア工業大臣Airlangga Hartarto氏、同5人目がシャープの戴正呉社長。指で「4」を示したのは、Industry 4.0の意味がある。

 6月12〜13日に訪問したタイでは、バンコク市で、副首相Somkid Jatusripitak氏およびタイ政府観光庁 (TAT)の総裁であるYuthasak Supasorn氏とそれぞれ会談。タイにおけるシャープの事業拡大に関する意見交換や、タイの観光振興に向けた8K技術の活用に関して、協力関係を一層深めていくことを確認したという。

 シャープは4月に、タイの販売会社であるシャープ・タイ・カンパニー・リミテッド(STCL)とTATによる協業を発表。8K技術を活用した「Amazing Thailand, Amazing 8Kプロジェクト」を開始し、タイの美しさを世界に発信する取り組みをしている。すでに、4月には、タイの旧正月を祝う「ソンクラーン・フェスティバル」を8K撮影したという。

 戴社長は、「シャープはタイでの事業拡大の可能性を追求し、タイ経済の発展に貢献していきたい」としたほか、「TATの協力を得て、8Kの素晴らしいデモビデオを撮影することができた。これは、タイだけでなく、今後、世界で活用していくことになる」と語った。

 またタイで、セブン-イレブンの展開や、農業および食料品、通信、不動産などに進出しているCPグループを訪問し、同グループのシニアチェアマンであるDhanin Chearavanont氏と、会長のSoopakij Chearavanont氏と会談。戴社長は、「シャープは、8KエコシステムとAIoTの実現を目指しており、さまざまなビジネスモデルでの協力を通じて、CPグループとのビジネスを拡大したいきたい」と述べた。

タイのSomkid Jatusripitak副首相(右)と、シャープの戴正呉社長(左)
タイのSomkid Jatusripitak副首相(右)と、シャープの戴正呉社長(左)
タイのSomkid Jatusripitak副首相との会談の様子
タイのSomkid Jatusripitak副首相との会談の様子
タイ政府観光庁のYuthasak Supasorn総裁(右)と、シャープの戴正呉社長(左)
タイ政府観光庁のYuthasak Supasorn総裁(右)と、シャープの戴正呉社長(左)
タイ政府観光庁での会談の様子
タイ政府観光庁での会談の様子
CPグループを訪問。中央が戴社長
CPグループを訪問。中央が戴社長

 6月15日に訪問したベトナムでは、ホーチミン市で、ホーチミン市人民委員会傘下にある投資・貿易促進センター(ITPC)の所長であるPham Thiet Hoa氏と会談し、ベトナムでの事業拡大に関する意見交換を行ったという。

 さらに、ベトナムの最大手量販であるDMXの親会社であるTGDD(The Gioi Di Dong)を訪問し、同社会長のNguyen Duc Tai氏と会談。戴社長は、「シャープは、液晶テレビに関しては、日本でシェアNo.1を維持しており、インドネシアでも、液晶テレビ、冷蔵庫、エアコン、洗濯機の主要家電商品で、シェアNo.1である。今後、ベトナムにおいては、新規商品を含めて、TGDDグループとの協力関係をさらに深めていきたい」と述べた。

 現在、シャープは、ホーチミン市内に、シャープ・エレクトロニクス・(ベトナム)・カンパニー・リミテッド(SVN)を設置。空気清浄機やテレビ、冷蔵庫、エアコン、掃除機を販売している。日本でも人気を博している蚊取空清は、ベトナムなどで日本に先駆けて発売した経緯がある。

 また2月には、ベトナムのThanh Thanh Cong Group傘下のGia Lai Electricity Joint Stock Companyから、約48MW-dcの大規模出力を実現する太陽光発電所の建設を受注。発電量は、ベトナムの一般的な家庭の年間消費電力量で約3万2628世帯分に相当するという。

投資・貿易促進センター(ITPC)のPham Thiet Hoa所長(右)と、シャープの戴正呉社長(左)
投資・貿易促進センター(ITPC)のPham Thiet Hoa所長(右)と、シャープの戴正呉社長(左)
会談後に記念撮影。右から5人目がシャープの戴正呉社長、右から4人目が投資・貿易促進センターのPham Thiet Hoa所長
会談後に記念撮影。右から5人目がシャープの戴正呉社長、右から4人目が投資・貿易促進センターのPham Thiet Hoa所長
TGDDのNguyen Duc Tai会長(左)と、シャープの戴正呉社長(右)
TGDDのNguyen Duc Tai会長(左)と、シャープの戴正呉社長(右)

CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)

-PR-企画特集

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]