KDDIは5月31日、兵庫県豊岡市と「豊岡市スマート農業プロジェクト」を開始すると発表した。第1弾として同日より、IoTを活用して「コウノトリ育む農法(無農薬)」の水田管理省力化を目指す実証事業を始める。
コウノトリ育む農法は、コウノトリが野外で生きていくためには里山や田んぼ、川や水路に多様な生きものがたくさんいる“自然環境”が必要なことから考えられた農法。農薬や化学肥料に頼らず、早期湛水・深水管理(田植えの約1カ月前から水を張ったり、通常よりも深く水を張ること)をしたり、オタマジャクシがカエルへと変態するまで中干しを延期して生き物を育んだりすることが特徴。2003年度に0.7haの面積から始まった同農法は、2017年度には407haまで拡大しているという。
しかし、この農法は通常よりも小まめな水管理を長い期間行うため、見回りに労力かかるという問題がある。特に大規模農家は水田が広範囲に及ぶため、見回りに半日かかることなど、水管理の省力化が課題となっているという。
今回の実証実験では、豊岡市の農家が管理する水田に通信回線を利用した水位センサを設置。農家はスマートフォンなどで水位を確認できるようになり、見回り回数の削減や時間の短縮による省力化とコスト削減が図れるようになるとしている。また、水位データに異常値が確認できた時は、自動でメール通知するという。
水位センサは、セルラーLPWAの規格「LTE-M」に対応。省電力特性を生かして電源の確保の心配や電池交換の頻度を減らせるため、設置や運用のハードルを下げることが可能。携帯電話回線を活用することで、ゲートウェイ(親機)を設置することなく、幅広いエリアにおいて機器の設置が可能だという。なお、セルラーLPWAを利用した水田の水位監視は国内初の取り組みとなる。
KDDIと豊岡市は、2016年9月に地域活性化を目的とした包括協定を締結。ビックデータを活用した観光活性化や、ICTを活用した産業振興施策など、地域課題を解決するための包括的な取り組みについて検討してきた。2017年度より農家所得を上げるための施策について農家と意見交換する中で、コウノトリ育む農法の水田管理省力化を望む声が多いことがわかり、今回の実証事業に至ったという。今後も、観光振興やICTを活用した産業振興など、地域課題の解決を図るための包括的な取り組みを進めるとしている。
また、豊岡市スマート農業プロジェクトは、今後もICTを活用して、農家の勘と経験を可視化するとしている。それらのデータから気候や土質の違いなど、地域の状況に応じた営農指導へ利活用する取り組みや、生育のムラを解消して収量の向上や品質の安定化を図る取り組みについて引き続き検討するとしている。
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