盛り上がる「レンディング」の今

貸金業の変遷からオンラインレンディングの可能性を探る

内山誓一郎(クレジットエンジン)2018年07月02日 13時00分

貸金業の変遷

 新しい融資の形であるオンランレンディングについて、現在では、レンディングと呼ばれることも多くなっているが、元々利用されて来ていたのは貸金業という言葉である。貸金業業界についてのここ十数年の変遷をたどることで、これからのレンディング領域の可能性を見ていきたい。

 貸金業界において、大きな変化が訪れたのは、今から11年前、2007年の貸金業法の改正である。それ以前においては、好景気も手伝って、金融関連の事業者だけでなくITなどからも多くの事業者が貸金業に参入していたため、当時の貸金業社登録数は1万1832社も存在し、貸出金は膨れ上がっている状態であった。一方で、無闇な貸付が横行したこともあり、多重債務者の数が171万人にまで達していた。

 この状況にメスを入れたのが貸金業法の改正である。これにより、消費性個人に対しての貸付(普通の個人支出のために用いる融資)は、総量規制が敷かれ、年収の3分の1以上の貸付ができなくなったほか、審査に年収証明書の提出が求められるなど審査が厳正化された。さらに、出資法の上限金利とみなし弁済制度により、グレーゾーン金利と呼ばれる最大29.2%の貸出金利の規定が厳格化され、利息制限法の上限として法定利息は金利20.0%(貸付額10万円の場合)に制限された。

 この改正により、多重債務者(5件以上の借入がある人)は2007年の191万人から、2017年には9万人にまで減少している(日本貸金業協会の資料より)。貸金業法の改正は、多重債務者を減少させる成果を挙げたと言える。

 一方で、改正により事業が立ち行かなくなる貸金業者が増加し、登録貸金業者は大幅に減少。2007年で1万1832社だった貸金業者数は、2017年には1865社にまでに減少した。規制の厳格化で以前ほど利益が出なくなったために撤退したほか、過払金請求問題により、過去に請求していた利息を返還する義務が発生したため、資金繰りが成り立たなくなったことも背景として大きい。

 貸金業法の改正後、総量規制と業者の減少であふれたニーズを取り込んだのは銀行カードローンである。貸金業法外の貸付行為となる銀行からの個人向け貸付は、総量規制の対象外という扱いになり、銀行が貸金業者のバックの元、カードローンを多く発行した。

 金融機関によるカードローンなどの貸付金残高は、2007年末に3兆2867億円であったが、2016年3月末には5兆7460億円まで増加している。しかしながらこの流れも、ここ最近で変化を見せている。再度、増加傾向が見られた個人の多重債務者問題に対応する形で、銀行も自主規制として、総量規制(年収の3分の1~2分の1)が敷かれることとなっている。

中小事業者向け金融

 中小事業者向けの金融においても上記の個人向け金融と状況は非常に近い。2007年までは、市中の事業者向け貸金業社(商工ローンなど)が存在していたが、これらも過剰な貸付、悪質な改修による行政処分や、収益環境の悪化、過払金請求などより、多くの事業者が閉鎖となった。これにより、貸金業者による中小事業者向けの貸付は2017年の17.8兆円から、2017年には7.1兆円にまで減少(日本銀行貸金業関連資料)している。

レンディングで変わる中小事業金融

 このような背景の中、昨今では、新種のサービスであるオンラインレンディグに対して期待が高まっている。この背景にはいくつかの要因がある。

1.利用可能なデータの拡大

 米国でのオンラインレンディングの広まりと背景は同じであるが、日本でも中小事業者でクラウドサービスが普及し始めている。会計ソフトはこれまでのパッケージ版から、「freee」や「MFクラウド会計」といったクラウドサービスが主流になってきている。また、初期費用や機器代などイニシャルコストが発生しない「Square」や「Coiney」などの決済サービスも店舗で導入が進んでいる。また、当然ながらEコマース事業者など、オンラインのみでビジネスが完結する事業者も多い。

 これまで企業の事業成績に関わる情報は、その事業者のオフラインのPCにエクセルの形でしか存在しなかった。しかしながら、クラウドサービスの利用拡大により、多くのデータがローカルではなくクラウド上に保持されることとなった。つまり、データの共有がこれまで以上に簡単になる上、かつ、粒度の細かい、正確なデータを第三者に対して共有できるようになった。機械学習やAI分析などの技術発展により、これらのデータを解析できるようになっており、これまでの決算書ベースの審査モデルとは全く異なるモデルの構築が可能となった。

2.非対面ニーズの拡大・新しいUI/UXへの期待

 また、ユーザー自体がこれまでの旧来型の対面での融資取引を望まず、非対面での取引を望む傾向が出てきている。これまでの融資の獲得には銀行担当者との関係構築や、彼らの望む資料の作成など多くの手間と時間を必要とした。若い世代の経営者はこのような関係性の構築については比較的ドライなケースも多く、オンラインで完結するのであればその方がシンプルで楽という考えもあるようだ。

 上記のデータ活用により、面倒な資料の作成も不要になる。これまで金融期間が軽視してきたUXの改善であり、心地よい取引を望む経営者はオンラインでの取引に移行していくのではないだろうか。

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