日本マイクロソフトは4月23日、AI(人工知能)の開発と活用にあたって重視すべき6つの倫理的要件を発表した。Microsoft Asia プレジデントのラルフ ハウプター(Ralph Haupter)氏によるもの。
AIの技術開発は加速しており、ヘルスケア、教育、気候変動への対策、穀物生産など、人間のあらゆる営みにおいて大きな進化を遂げており、AIを人間の創造性と組み合わせることで、個人の可能性は最大化され、成果を達成できるようになると見る。
マイクロソフト研究所では、人類にとって最も深刻な疾病のひとつである癌の治療法を試験管や医療機器ではなく、AIと機械学習により発見しようとしている。機械学習と自然言語処理を活用することで、世界の癌専門医に対して、膨大な研究資料を調査するための直感的な方法を提供。患者に対して、最も効果的で個別化された癌治療法を発見できるよう支援している。
同社のもうひとつの取り組みでは、機械学習とコンピュータービジョンの組み合わせにより、放射線科医が患者の腫瘍の進行状況を詳細に把握。その治療法を発見できるよう支援している。
なお、AIには社会の最も困難な課題を克服する可能性があるものの、その可能性を最大化するためには、大量のデータを収集し、集約し、共有することが不可欠だという。
しかしそれらは、ユニバーサルアクセス、プライバシー、透明性などに関する倫理上の議論を引き起こす。さらに、AIによる意思決定プロセスの強化が続く中で、どのようにすればAIがあらゆる人を公平に扱うようにできるのか。AIシステムの説明責任を人や組織が負うようにするためにはどうしたらよいか。これらは、普及が加速するAIの技術開発において、個人、企業、政府が熟慮し、分析し、解明しなければならない重要な疑問点となっている。
同社は、AIの可能性をフルに発揮するため、信頼という堅固な基盤が必要であり、最終的にAIが信頼できる存在であるためには、透明性、安全性、多様性に加えて、最高水準のプライバシー保護を維持しなければならないと考える。そこで、AIによるソリューションの開発と展開の中核にあるべき6つの基準として、(1)プライバシーとセキュリティ、(2)透明性、(3)公平性、(4)信頼性、(5)多様性、(6)説明責任を挙げた。
プライバシーとセキュリティでは、他のクラウドテクノロジと同様に、AIシステムは、データの収集・使用・保存を規制するプライバシー法に準拠し、個人情報がプライバシーの基準に合致して使用され、悪用や盗難から保護されるよう保証すると設定。
透明性では、AIの人々の生活への影響が増すにつれ、どのようにしてAIが判断したかを人々が理解できるようAIシステムの機能に関する背景情報を提供し、潜在的な偏見、エラー、予期せぬ結果を容易に特定できるようすると設定。
公平性では、AIシステムが公平性を保証するために、バイアスがAIシステムにどのように影響を与えるかを理解しなければならないと設定。
信頼性では、AIシステムは明確な条件の下で動作し、予期せぬ状況においても安全に応答。想定と異なる形で進化していかないように設計すると設定。また、AIシステムをどう展開し、いつ展開するかの意思決定においては、人間が重要な役割を果たさなければならないとしている。
多様性では、AIソリューションが不用意に人々を排除することになる製品や環境の潜在的障壁を予期した多様性のある設計規範によって、広範な人間のニーズと体験に対応すると設定。
説明責任では、AIシステムを設計し、展開する人々はシステムの動作について説明責任を負うとしており、AIの説明責任の基準は、ヘルスケアにおけるプライバシーなどの他の分野での体験と実務に基づくと設定。そして、システム設計段階だけでなく、世界での運営されている中でも、継続的に遵守するとしている。
これらの6つの基準は同社のAI製品とサービス設計の規範となっており、製品がこれらの基準に準拠するかを制度的に確認するための社内委員会を設置している。
さらに、AIコミュニティの広範な取り組みに深く関与しており、AIのベストプラクティスを構築し、その認知度向上と人々と社会に対する影響の議論の促進を目指すことを目的とした「Partnership on AI」を共同設立した。
これらの取り組みは、同社の目標「Responsive and Responsible AI Leadership(迅速で責任あるAIのリーダーシップ)」に基づくものであり、同社のアプローチは、地球上のすべての個人と組織が、より多くのことを達成できるようにするという企業ミッションに基づいているという。
さらには、同社は極論として、AIが多くの課題を解決し、人間性を支援し、その能力を強化してくれると考えているという。AIの将来そして、AIが作り出す私たちすべてにとってのより良い未来について楽観的だが、この未来 を実現するためには、政府、企業、学術界、市民団体が協力して、信頼できるAIシステムを構築していくことが不可欠だとしている。
AI には信頼が必要:AI の開発と活用にあたって重視すべき6つの倫理的要件を発表CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス