“子どもとYouTube”というテーマは、大きな問題をはらんでいる。息子が通っている小学校でも、3年生の児童が友だちと遊んでいるときに動画を撮影、投稿してしまっていたことが保護者会で取り上げられて問題視された。YouTubeは、「録画」→「次へ」→「アップロード」ボタンをタップするだけの3ステップで録画から投稿までできてしまう。判断力の乏しい子どもでも簡単に投稿できてしまうのだ。
最近は、子どもが長時間YouTubeを見続ける問題が指摘されている。長時間見続けることも心配だが、普通のキャラクター動画を見ていたはずなのに、気づいたら不適切な動画が再生されていることがあることをご存知だろうか。今回は、通称「エルサゲート」問題と対策についてお伝えしたい。
「エルサゲート」とは、人気ディズニー映画「アナと雪の女王」のエルサと、事件や不祥事を意味する「〜gate(ゲート)」を組み合わせてできた造語だ。子どもに人気のキャラクターなどを使いながら、再生すると暴力的、性的、残虐性の高い動画などであることから、欧米では2017年頃から問題となっている。日本でも年末あたりから徐々に話題となってきている。
登場するキャラクターは、エルサなどディズニー系プリンセス、ミッキーマウス、スパイダーマンなどのほか、アンパンマン、リカちゃん、しまじろうなどの日本の子どもに人気のキャラクターを登場させたものも多い。
サムネイルだけでは一見普通の子ども向け動画なのだが、よく見るとタイトルがおかしかったり、キャラクターが不適切なポーズなどをとっていたりする。そのような動画が、YouTubeでは普通の子ども向けと並んで「次の動画」としておすすめ動画欄に表示されているのだ。
エルサゲート系の動画を見たが、大人でもかなり気分が悪くなるものばかりだった。キャラ同士が性的なことをしていたり、子どもに残虐行為を働いたり、排泄をしているものもある。アンパンマンやリカちゃん人形などの市販の人形を使い、シモネタ系やエログロ系の動画に仕上げているのだ。実写版のほか、クレイアニメやCGアニメなどもある。子どもが知らずに見たらトラウマになりそうなものばかりで、子どもに対する強い悪意を感じる。
執筆現在も、YouTubeで「エルサ スパイダーマン」「アンパンマン リカちゃん」「プリキュア しまじろう」などで検索すると、一般の子ども向け動画と並んでおかしな動画が見つかる状態だ。Twitterでも、ハッシュタグで「#Elsagate」で調べれば海外のエルサゲートに関する投稿が多数上がっているのが確認できる。
調べたところ、「◯◯おねえさん」という名前で、似たようなおかしな動画を多数投稿しているアカウントを多数見つけた。同様のアカウントは調べただけでもかなりの数存在し、すべて同じようなイラストのプロフィール画像を使っている。
そのようなチャンネルは登録者数が12万人などと多く、認証バッチがついているものもある。登録者数は多いのだが、よく見るとコメント欄が明らかにおかしい。「あ」「n」「ら」など、まともなコメントがほとんどついていないのだ。再生数を増やすためにアカウントを作って自作自演している可能性が考えられる。
Googleは、エルサゲートを含む暴力的かつ過激な動画を、2017年6月以来15万本以上削除しているという。しかし、2017年11月には、子ども向けに作られたアプリ「YouTubeKids」でもこのような動画が見られる状態とニューヨーク・タイムズによって批判されており、対策が追いついていない状態だ。
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