ホーキング博士は今もどこかの宇宙に生きている--宇宙への扉を開いた天才 - (page 2)

Eric Mack (CNET News) 翻訳校正: 編集部2018年03月22日 07時30分

 Hawking氏は1988年に書籍「ホーキング、宇宙を語る(原題:A brief History of Time)」を出版した。同書はベストセラーとなり、Hawking氏はあっという間に有名人になった。

 同氏は自分の力では部屋の中を横切ることさえできなかったが、そんなことは問題にならなかった。ここ30年以上、同氏はメディアを使って自分のアイデアを世界中に広めてきた。複数の宇宙が存在する可能性を説明したり、人工知能の危険性に警鐘を鳴らしたり、あるいは小さな宇宙船を太陽系外の星に送り込む取り組みをスタートさせたりする際に、Hawking氏は常にその原動力となっていた。同氏の名前は、あるアイデアを宇宙に押し出すのに必要な燃料の役目を果たしてきた。同氏の発言は瞬く間に世界中に広まった。

 サイエンスフィクション(SF)の分野には、ブラックホールがほかの宇宙とつながる出入り口である可能性を示唆したあるアイデアがある。時にワームホールと呼ばれるこのアイデアを盛り込んだSFを筆者自身書いたことがあり、また多くの米CNET読者がクラウドソース方式でそんなSFを書いたこともあった。このアイデアは、入り組んだ、素晴らしい物語を進めるための怠惰な方法に思えるかもしれないが、Hawking氏自身はこのアイデアを退けたりはしなかった。

 「この穴は大きいものである必要がある。そしてもし回転している場合には、そのなかにほかの宇宙へ通じる経路があるかもしれない」とHawking氏は2008年に行った講義で述べた。「ブラックホールは、世間で思われているほどの暗闇ではない。ブラックホールはかつて永久に出られない牢獄のように思われていたことがあったが、そうではない。ブラックホールから抜け出すことは可能で、抜け出る先が穴の外側の場合もあれば、時には別の宇宙である場合も考えられる。だから、もし皆さんがブラックホールに入り込んでしまったと感じても、諦めてはいけない。かならず出口はある」(Hawking氏)

 今は、まるでHawking氏が別のミステリアスなブラックホールのなかに永遠に失われてしまったように感じられる。このブラックホールは人生の終わりに待ち受けていて、われわれの誰もがゆっくりとそちらに引き寄せられている。Hawking氏は、われわれが知る死というブラックホールが別の宇宙ーー同氏が理解しようと苦心してきたすべての物事の創造主とついに相まみえる場所ーーにつながる出入り口であるとの考えを信じなかった。「神」という概念は宇宙の解明にとって「不必要」と同氏が考えていたのは有名な話である。

 しかし、もし存在というものがHawking氏が信じていたようなあり方だとするなら、その場合どこか別の宇宙に別のHawking氏が生きていて、ステージの上を歩き回ったり、おそらくはいくつものブラックホールのなかを通って複数の宇宙や次元の間を行き来していることだろう。あるいは、Hawking氏がわれわれのところに立ち寄る日さえいずれは来るかもしれない。

 その日が来るまで、われわれは、計り知れないほどの身体的困難を克服し、多くの人がようやく理解し始めたやり方で人類の地平を拡げた人のことを忘れないだろう。

この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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