スペースの時間貸しサービスを提供するスペースマーケットは3月15日、民泊事業を本格的に開始すると発表した。「スペースマーケット STAY」として、民泊施設の登録受付を開始したほか、全国の地域パートナーと連携し、民泊を運営するホストをサポートする。
スペースマーケットは、時間貸しのレンタルスペースとして、お寺、映画館、廃墟ビル、住宅など、全国に1万2000以上を取り扱う。ママ会やお花見、ハロウィンパーティなど、家族や友人、知人と一緒に利用している人が目立つ一方、企業や学生の会議や研修の場として使用されるケースも多いという。
民泊というと、インバウンド需要を思い浮かべてしまうが、スペースマーケットでは、インバウンド需要に加え、企業や学生などの団体客を地方へ誘致することで、地方への送客につなげることが狙い。スペースマーケット STAYの開始にあたり、福井県鯖江市(鯖江市、NPOかわだ夢グリーン、慶応大学大学院メディアデザイン研究科、オークツ)、岩手県一関市(イーハトーブ東北)、新潟県十日町市(HOME Away From Niigata)らと地域パートナーを組み、地域における関係人口の増加を目指す。
この背景にはそれぞれの地方が抱える課題がある。一関市は、金色堂や毛越寺の庭園といった観光名所に恵まれるが、宿泊施設が少なく、数時間の滞在で別の観光地に行ってしまうことが多かったとのこと。また十日町市は、世界最大級の国際芸術祭「大地の芸術祭」を3年に1度開催しているが、開催年以外の年にも観光客を呼びたいという思いが強かったという。
スペースマーケットが見据えるのは、単なる宿泊施設だけではなく、その地域に根ざす関係人口の増加と、その構築による新たな暮らし方の提案だ。新幹線の延伸やリニアモーターカーの準備が進むなど、日本国内での行き来がしやすくなる中、地方に住むか都会に住むかのどちらかを選ぶのではなく、借りられるスペースを活用することで、どちらも暮らしも体験できる環境を整える。
民泊事業では、宿泊施設を提供するホストの数が重要になるが、スペースマーケットでは、時間貸しスペースサービスで培ったノウハウをベースにホストの獲得に挑む。時間貸しサービスが都心を中心に展開にしているのに対し、民泊事業では、地方にも注力。そのためには地域パートナーの存在が不可欠だという。
地域パートナーは、今後も増やしていく方針。すでにパートナーシップを結ぶ福井県鯖江市市長の牧野百男氏は「今回の提携を通じ、市内の既存資源を活用しながら、国内外の旅行者だけでなく企業研修や出張、サテライトワーカーと市民などとの交流が深まり、関係人口の拡大が進むことに大いに期待している」とコメント。また、イーハトーブの代表取締役である松本数馬氏は、一関市が「通過型」の観光地であることに言及。「あらゆるものを宿泊施設へと活用する選択肢が広がることで、ゲストやホストがつながる新たなきっかけになることを期待している」、HOME Away From HOME Niigataの代表取締役である井比晃氏は「大地の芸術祭の街として知らせているが、会期中以外に多くの休遊資源を抱える街でもある。その資源を有効活用し、地域の課題を解決する手段としていきたい」とメッセージを寄せている。
スペースマーケット STAYでは、順調に利用者数を伸ばしている時間貸しスペースサービスと連携し、地域の課題と利用者ニーズをマッチングさせることで、スペースマーケットにしかできない民泊事業の運営を目指すとしている。
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