GPUを用いたディープラーニングによるAIシステムは、ご存じの通り、すでに多くのビジネス現場で活躍している。佐々木氏はそのなかでも注目すべき事例についていくつか取り上げた。
1つは疾病を予測・予防するシステム。米マウントサイナイ医科大学が開発した「Deep Patient」では、患者の病歴データをディープラーニングで解析することで、約80種類の疾患の発症を予測することが可能になっているという。
また、NASAは撮影した膨大な数の衛星写真を分析する「DeepSat」でGPUディープラーニングを活用し、地表写真から温室効果ガスの影響を読み取っている。佐々木氏によると、従来の仕組みでは並列処理するために大量のサーバが必要だったところ、GPU処理に切り替えたことで「サーバ台数を大幅に圧縮することにも成功した」とのこと。
さらに、サイバーセキュリティ製品「CylancePROTECT」を提供する米Cylanceは、GPUディープラーニングによってマルウェアの高精度な検出を可能にした。2017年5月頃に発生した、PC内データを人質に取るマルウェア「WannaCry」を、亜種も含めて検知、防御する目覚ましい成果を上げたとしている。
音声認識の分野でもGPUは高い性能を発揮する。なかでもDeepgramは、コールセンタの通話音声を分析してテキストに高精度変換するシステムにディープラーニングを活用。音声から得た情報で、何の製品の問い合わせかを判断するとともに、相手がどういう感情で話していたかも分析。この音声認識技術を応用し、2人の出演者が対談している動画に対して長いフレーズで文字検索し、その文章を話す場面を頭出しするシステムも実現している。
最後に紹介したのが、日本企業のフジクラが画像解析にGPUディープラーニングを採用している例。チップのウエハの外観検査において、設計データと実物写真とを比較して品質チェックする仕組みを確立した。通常のAIでは、不良品かそうでないかの結果しか見ることができないが、同社の仕組みでは「画像の何に着目して判断したのかを表示」するようになっているのが注目すべきポイントと佐々木氏。正解率も人間を超えるレベルで達成しているとする。
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