スマートフォンの主要アプリに成長したフリマアプリ。業界規模としては王者メルカリが先行しているが、フリマアプリの先駆者「フリル」を運営するFablicも2016年9月に楽天グループに参画。手数料無料化などで攻勢をかけており、楽天のフリマアプリ「ラクマ」とフリルを合わせた流通額も、年間換算で1000億円に達するなど王者を追っている。
Fablic買収から1年半弱ほどラクマとフリルの2アプリ体制を敷いてきたが、楽天はフリマアプリを統合し、新生ラクマとして再出発すると発表した。アプリの統合について、楽天執行役員ECカンパニーディレクターC2C事業部ジェネラルマネージャの松村亮氏は、リソースの効率化と楽天グループとのシナジーを理由として挙げる。
もともと楽天によるFablicの買収は、レディス向けファッションアイテムに強みのあったフリルと楽天オークションの流れをくむラクマを組み合わせることで、得意分野を補完する目的があった。楽天による買収後は、楽天IDとの連携やラクマと同じく手数料の無料キャンペーンなどの実施により取扱高も伸び、松村氏いわく「数値としてはいい状態」と語る。
しかし、同社代表取締役社長兼会長の三木谷浩史氏がC2Cビジネスで年間取扱高2000億円を目指すと発言したこともあり、この先さらに成長させるためには、2つのプラットフォームに経営資源やテレビCMなどのPRリソースを分散させるのではなく、1本に絞ったほうが効率が良いとの判断に至った。
松村氏は、フリマアプリ単体でビジネスするのは、Fablicにジョインしてもらった意味があまりないと指摘する。グループサービスとのクロスユースを深め、楽天会員でまだラクマ・フリルを体験していないユーザーにも使ってもらうほか、アプリを1本に明確化することで、他サービスとの連携が強化できる。
具体的な連携についてはこれからとしつつ、他社との一番の差別化ポイントとして力を持つのは、やはり楽天スーパーポイントだという。現時点では、ポイントを使っての決済が可能だが、今後は楽天市場のように購買ごとにポイントを付与することも検討中だ。
新生ラクマは、システムとしてはフリルがベースとなり、UIはフリルのものを踏襲する。アイコンも、同アプリのモチーフであった三色の屋根を残しており、10〜20代の女性を中心としたコアユーザーが、引き続き気持ちよく使ってもらえるよう配慮したとしている。松村氏は、「基本的には自分たちで作ったものを優先したいが、一年半弱の運用をもとにフェアに判断した」という。
アプリ統合後は、フリルにユーザーとデータを集約するため、ラクマユーザーはフリルに移行する必要がある。また、移行ツールとして「らくらくお引っ越しツール」を提供。ラクマで販売中の出品物とこれまでの評価データをフリルにコピーできる。なお、統合前のラクマについては2018年3月以降、段階的に機能制限を実施し、2019年中にサービスを終了する。
楽天と言えば、“楽天経済圏”と呼ばれるほど、国内9000万IDの会員基盤を活用し、多方面にサービスを拡充させるエコシステムを構築している。一方、フリマアプリ王者のメルカリも会員基盤をベースとした横展開を進めている。松村氏は、「エコシステム的な発想はC2Cに限らず、楽天がずっと意識してきたこと。(メルカリは)そのC2C版をやろうとされているのでは」とし、「楽天はエコシステムで先行しているので、C2C視点でのエコシステムをなるべく早く完成させたい」と語った。
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