オンラインレンディング事業者は ウェブサービスの構築、データ分析、低コストでの運用体制に強みを持つ、一方既存金融機関は大きな顧客ベース、調達力、そして何より金融において一番重要な信用力に強みを持つ。ここ2〜3年で金融機関とオンラインレディング事業者の提携は広がっており、OnDeckはJPMorgan & Chaseと、KabbageはSantanderとの提携を開始した。
すでに、JP Morgan& ChaseはOnDeckとの協業によりChase Business Quick Capital をリリースしており、2017年5月時点で6.7億ドル以上の融資承諾を実行している。これは、これまでのOnDeckの年間融資承諾額に匹敵するものである。「信用力」という要素がアメリカにおいてもいかに大きいものかということがわかる。JP Morgan& Chaseとしても自社で持ち得なかった能力をOnDeckとの提携により得ている形となっている。
一方、中国におけるオンラインレンディングの進化は、 アメリカの事情とは大きくなる。中国においては、さらに急速にレンディング領域のオンライン化が進んでいる。最近の日本の記事では芝麻信用(Sesami Credit)に代表される個人の信用創造について大きく報道されているが、中小企業の分野でもその成長は著しい。アリババのグループ企業であるAnt Financialがその一例である。
中国で中小事業者向けのオンラインレンディングが急成長した背景としては、そもそもの中国の金融市場・及び法規制が未成熟だったことが大きい。日本にあるような貸金業のライセンスや本人確認に関する規制などがなく、比較的自由にサービスを構築することができたのだ。
また、中国においてはアリババやテンセントをはじめとするEコマースの巨大IT企業がすでに存在しており、彼らが隣接領域としてレンディングを選択しやすかったことも挙げられる。この点がアメリカのマーケットとは異なり、スタートアップが様々なサービスを提供するアメリカに対して、中国ではオンラインレンディングは大手インターネット企業の独壇場となっている。彼らは、アリババのようなEコマースサービスを利用する事業者、AlipayやWeChat Payを利用する事業者のユーザー層を既に獲得しており、それらユーザーの資金ニーズに応えることでオンラインレンディングの市場を構築した。
ただし直近では取り締まりが厳しくなってきている傾向がある。すでに200以上のオンラインレンディング事業者が存在する一方、ライセンスを持たないP2Pレンディング業者が法外な金利での貸付募集を行っているほか、借入人となるユーザー保護体制の不足、事業者側のリスク管理体制の未構築、省によってライセンス発行の基準が異なるといった問題が多い。これを受け、2017年11月に中央銀行は新規の貸付業者へのライセンス発行を停止。現在は一旦落ち着かせる時期にあり、法整備をおこないながら徐々に健全な市場へと改善していく方向性にあるものと思われる。
アメリカ・中国とも異なる環境下で異なる道筋をたどっているものの、ユーザーのオンライン化、データ量の拡大などを大きな背景として、オンラインレンディングは成長してきた。日本においてはまだオンラインレンディング事業者がやっと出て来た段階であり数年の遅れをとっている。法整備が進みアメリカに近い状況の日本において、今後どのような形でオンラインレンディングが広まるのか、ぜひ注目してほしい。
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